(ブルームバーグ):ウォール街の大手行がここ1カ月の間、国際的な銀行グループ「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」を相次ぎ脱退している。
NZBAは、銀行の二酸化炭素排出量削減を促すグループ。脱退したのは、ゴールドマン・サックス・グループやウェルズ・ファーゴ、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、モルガン・スタンレー。米最大手JPモルガン・チェースも続く可能性がある。
事情に詳しい複数の関係者によると、こうした動きはトランプ氏の米大統領返り咲きで高まる政治的圧力から身を守りたい米銀の意向を反映したものだ。非公開情報として関係者が匿名を条件に語った。
NZBA事務局長のサラ・ケミット氏は12月31日付の書簡で、米国勢の脱退がさらに増えるのを覚悟していると会員に伝えた。ブルームバーグが確認した同書簡によれば、同氏は「政治環境」を理由に挙げている。
相次ぐNZBA脱退による現実的な影響は不透明だ。ブルームバーグが集計したデータによれれば、2021年の同グループ結成以降、銀行全体では化石燃料産業への融資を増やしている。
ペンシルベニア大学のジル・フィッシュ教授(ビジネス法)は、NZBA加盟は、「意味のある気候変動へのインパクト」よりは「善行のシグナリング」の可能性が高いと指摘している。
NZBAの広報担当者はコメントを控えた。
活動家は足元でウォール街を標的にした介入を政府に求めている。
非営利団体のエンバイロメンタル・アドボケーツ・ニューヨークはニューヨーク州当局に対し、ウォール街で事業展開する銀行に気候変動対策を義務付ける規制・法の導入を促している。
水面下では2年余り前から緊張がくすぶっていたことをブルームバーグは報じている。JPモルガンやモルガン・スタンレーなどが22年、気候ファイナンスに関する拘束力のある目標に反対した経緯がある。
NZBAはその後要件を一部緩和し、メンバーは残留した。ただ、気候変動対策に前向きな組織への敵対的な姿勢を米共和党が強めるのに伴い、金融業界は立ち位置を見直しているところだ。
NZBAを脱退した銀行はいずれも、脱炭素化は依然として価値のある目標だと認識していると公式には表明している。一方で最大の責務は顧客ニーズに応えることだとの見解も明らかにしている。
脱退の公式の理由については、どの銀行も明らかにしていない。
原題:Wall Street’s Top Banks Just Quit a Once Popular Alliance (1)(抜粋)
--取材協力:Alastair Marsh、Gautam Naik、Todd Gillespie.
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