株価に関して、2024年は歴史的な1年であった。日経平均は約35年振りに過去最高値を更新し、7月には42,000円台を付けた。もっとも、その後は伸び悩む展開が続いている。年後半も上昇基調であった米国株と比べると力強さに欠けている。

さて、2025年は巳年である。相場の格言では辰巳天井と言われ、株価は非常に良い年まわりといわれる。その意味では2025年の相場は期待できるともいえるが、その後は「午尻下がり、未辛抱、申酉騒ぐ」と、相場格言的には少し心配な展開となる。

過去を振り返ると、バブル相場末期の1988年・89年は辰年・巳年であり、まさに辰巳天井であった。そして、その後はバブル崩壊となり、前述の通り、日経平均株価の最高値更新に約35年も要してしまった。

その意味で、2025年の日本経済に求められるのは、短期的な経済活性化だけではなく、辰巳天井を超えて、持続的かつ安定的に株価が上昇する経済構造を構築することと言える。

そのために必要なこととして、第一は、生産性向上と賃上げの好循環を生み出すことである。人手不足となるなか、労働力増加は見込めないが、逆にそれを逆手にとってIT投資等を積極的に進めて生産性向上につなげていくことが求められる。

第二が円安をビジネスチャンスにすることである。一般的に円安は輸出を増加させるが、足元では日本企業の輸出がそれほど増えていない。こうしたなか必要な対応としては、非価格競争力のある製品の強化、米中対立の先鋭化を受けた「経済安全保障」に関わる産業の国内回帰、スケールメリットを狙った企業再編等、製造業の基盤整備を図っていく必要がある。輸出先についても、近年存在感を高めているグローバルサウス諸国向けを増やすことで米中対立の影響を受けにくくするなどの対応を進めるべきである。

第三に、世界的にサービス貿易のウエイトが高まるなか、サービス輸出の強化に向け、ゲーム・アニメなどのコンテンツ産業を強化していくことも必要である。さらに、近年好調なインバウンドについても、高付加価値化や回復が遅れている地方部への誘客なども強化すべきと考える。

第四に、金融市場の改革も継続する必要がある。例えば、2023年3月に東証がPBR1倍割れの改善等、企業に資本コストを意識した経営を求めたことが、昨年来の株価上昇に寄与した。もっとも、PBR1倍を超えたことで満足している企業も散見される。東証改革は、株価上昇だけでなく、日本企業の国際競争力強化にも資する。2025年は一層改革を進めていくことが求められる。

株価は日本経済の将来性についてのバロメーターである。製造業・非製造業ともに産業競争力を強化できるかが2025年以降も株価上昇を実現するカギである。各企業の自助努力はもちろんのこと、こうした企業の取り組みをサポートする政府の産業政策・成長戦略の推進も同様に不可欠である。各国では重要産業に政府がサポートする「産業政策の大きな政府化」が進むなか、日本においてもイノベーション創出や経済安全保障に資する分野においては政府支援が不可欠と考えられる。

さらに2025年は、米国ではトランプ大統領の就任、払拭されない中国のデフレリスク、世界的な地政学的リスクの高まりなど、世界的に様々な不安定要因がある。一方、日本においても、政局に不透明感が漂っているほか、「団塊の世代」の全員が後期高齢者となる年でもあるなか(2025年問題)、社会保障制度の持続可能性にも懸念が高まっている。こうしたリスクや構造問題にいかに対処するかも重要である。

(※情報提供、記事執筆:日本総合研究所 調査部長/チーフエコノミスト/主席研究員 石川 智久)