トランプ氏の政策を織り込んだ向きは「一部」にとどまったが、議長会見もタカ派的
パウエル議長の記者会見もタカ派的だった。パウエル議長はQ&Aで「本日はギリギリの判断(closer call)だったが、雇用最大化と物価安定という2つの目標の達成を促す最善の決定であると考え、正しい判断であると判断した」と、自ら進んで述べた。声明文ではハマック・クリーブランド地区連銀総裁が利下げに反対したことが明らかとなったが、ドットチャートによると24年末の政策金利見通しを4.675%としたメンバーが4人いたことから、声明文に記される投票者ではなかったメンバーからも3人が利下げに反対だったと予想される。もっとも、24年末の政策金利見通しを4.375%に設定したメンバーは15人いるため、数の上では「ギリギリ」とは言えない。今回利下げを主張したメンバーの中でも迷いがあったと予想される。パウエル議長が「ギリギリの判断」としたことは、ドットチャートで示された情報以上にタカ派的だったと言える。
ドットチャートにおいて25年の利下げ回数の見通しが減少したことについてパウエル議長は「今年我々が経験したインフレ率の上昇と、インフレ率がさらに上昇するという予想の両方を反映しているのだと思う」と述べた。
トランプ次期政権の政策の影響についてパウエル議長は「一部(some people)は非常に予備的な段階で、政策の経済効果に関する非常に条件付きの推定値を織り込み始めており、それを会議で発言した」とし、一部のメンバーが先行して見通しに反映させたことを示唆した。もっとも、関税引き上げの影響については、「委員会が今行っているのは、経路と理解について議論することであり、関税主導のインフレが経済にどのような影響を与えるか、また、関税がインフレにどのような影響を与えるか、そして、それをどのように考えるかについて、再び理解することである。我々はそれぞれ、かなりの量の作業を行い、最終的に実際の政策がどのようなものになるかが見えてきたときに、より慎重で思慮深い、適切な政策対応の評価を行うための立場に身を置くことになる」とし、本格的な議論はこれからであることが示唆された。
その後も関税の影響について問われ、パウエル議長は「関税が消費者物価にどの程度影響を与えるかについては、多くの要因が関係している。また、その影響がどの程度持続するかもわからない。実際の政策については、本当にまったくわからないのだ。だから、結論を出すには時期尚早だ」「非常に慎重に結果を分析する必要がある。ただし、政策がどのようなもので、どのように実施されるのかを実際に確認できてからだ。我々はまだその段階にはない。他の予測者がこれらの問題について考えているのと同じことをしている段階であり、しばらくは明確な答えを導き出そうとはしていない」と、評価は時期尚早であると、繰り返し述べていた。