FRBのタカ派化のリスクは米経済より世界経済
今後を展望すると、今回のFRBのタカ派化がどのような影響をもたらすかを考える必要がある。むろん、この日はタカ派的なFOMCを受けて米株が下落するなど、米経済への不安が高まったと言える。しかし、実際に心配すべきは欧州やカナダなどこれまで利下げが先行してきた他国の状況だろう。多くの国・地域で経済が悪化しており、利下げによる対応が進んでいるが、FRBがタカ派化すると、他の中央銀行は利下げを進めにくくなる。この日もFOMCがタカ派だったことで、ユーロドル相場が大きく下落し、ユーロ圏では輸入インフレが懸念される状況になるだろう。通貨安がユーロ圏の経済を刺激するという期待もあるが、輸入インフレが内需を再び悪化させるという副作用の方が懸念されるだろう。ユーロ安が先行するとECBも利下げ判断に躊躇せざるを得ないと予想され、中央銀行が実体経済の不安を取り除くことが出来ずにリスクオフが進む(ユーロドルはさらに下落する)というスパイラルに陥る可能性もある。
このように考えると、いくら米国経済が堅調であっても、FRBのタカ派姿勢が世界経済に与える悪影響は無視できないだろう。コロナ禍以降、FRBの金融政策が他国経済にダメージを与える動きが散見されているが、今回のタカ派姿勢も例外ではない。世界経済の減速が進み、コモディティ価格の下落などを通じて米経済や米インフレ率を下押しすることになるだろう。結果的に、FRBは25年中は4回利下げすることになると予想される。
(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)