英国企業が今年、合わせて約20万人を削減したことが税務データから明らかになった。スターマー首相とイングランド銀行(英中央銀行)への警告サインとなる英労働需給の緩みが示唆された。

17日に公表された英歳入関税庁(HMRC)のデータによると、民間セクターの従業員数は昨年末以降1%減少し、2100万人強となった。この数字は公務員が多くを占める保健・医療、教育、行政サービスなどのカテゴリーを除いて算出された。

税務データは、労働市場がわずかに引き締まっていることを示す英政府統計局(ONS)のデータとは対照的だ。ONSの労働力調査の回答率が低下したことで、エコノミストは給与税データなどの代替指標に注目している。

求人広告も労働市場の緩みを反映する。17日公表のONSデータによれば、9-11月に民間企業が掲載した求人数は50万人強と、今年に入り12%減少した。

勢いを失う労働市場は、利下げペース決定のために労働需給の把握に努めるイングランド銀にとってハト派的シグナルだが、雇用拡大と生活水準向上を公約に掲げた労働党政権にとっては打撃となる。

イングランド銀は底堅い雇用市場が賃金上昇圧力を高止まりさせている状況を懸念し、今年の利下げを2回にとどめた。こうした不安は、約1年ぶりに伸びが加速した直近の賃金データで一部裏付けられた。来年3回の利下げが決まるとのトレーダーの見方は大幅に後退した。

税務データでは、サービス部門の価格上昇圧力の目安として注目される接客業で雇用が最も大きく減少した。

INGの先進国市場担当エコノミスト、ジェームズ・スミス氏は給与税のデータについて、「市場予想より積極的な利下げサイクルをわれわれが来年見込む根拠の一つだ。今のところ、雇用の極端な減少は見られず、他のデータでもレイオフの急増を示す兆候はほとんどない。だが雇用市場が過去1年にわたり勢いを失い続けた様子があらためてうかがえる」と説明した。

リンクトインのデータを用いるバークレイズの指標は、雇用が2022年に減少した後、過去2年にわたり伸びが停滞している状況を物語る。

バークレイズUKのエコノミスト、ジャック・ミーニング氏とアッバス・カーン氏はリポートで、「雇用の伸びの目安となるわれわれの代替指標は、公式な労働力調査データが示すより長期の一層の鈍化をさらに裏付ける。英労働市場は緩んでおり、この傾向は数カ月続くだろう」と分析した。

原題:UK Firms Cut Almost 200,000 Employees This Year, Tax Data Show(抜粋)

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