米ベインキャピタルは18日、富士ソフトに対する株式公開買い付け(TOB)に関連し、同社からの賛同を前提条件としない形に改めると発表した。同意なき買収に踏み切れば、日本の企業合併・買収(M&A)市場は新たな局面を迎えることになる。

ベインは11日、1株当たり9600円で1月下旬か2月上旬をめどにTOBを開始することを提案しており、この点に変更はない。当初は会社側の賛同を前提としていたが、富士ソフトは17日夜、ベインの提案に反対を表明した。

ベインでは前提条件変更の理由を、KKRが現在実施中のTOB価格9451円を1.58%上回る価格を提示したにもかかわらず、賛同を得られず「強い懸念と不信感」を持っているなどとした。KKRのTOBが撤回または不成立となった場合、富士ソフトの意向にかかわらずTOBを実施するという。

ベインが実際にTOB実施に踏み切れば、グローバルなプライベートエクイティ(PE、未公開株)ファンドによる異例の同意なき買収案件となる。これまでも、PEファンドがTOBを巡る価格競争に参加することはあったが、強引な買収者とみられるのを嫌って買収先企業の同意を重視していた。

また、ベインの18日の発表によると、買収資金について、これまで銀行融資とベインの出資で賄う予定としていたが、ベインからの出資のみに変更された。TOBの下限はベインの方針に賛同している創業家の持ち分と合わせて50.1%(市場から33.9%)としている。

KKRは段階的にTOBを実施しており、すでに株主総会で重要提案への拒否権を持つ3分の1超を保有している。19日を期限とする現在のTOBでは応募が19.25%(現在の持ち分と合わせて53.22%)に満たない場合はすべての買い付けを行わない。ベインがTOBに踏み切り、成立した場合は、経営陣の合意形成が困難となる可能性がある。

富士ソフトは17日、ベインの提案に反対する理由として、KKRのTOB価格は十分妥当で、ベイン追加提案との価格差1.58%を考慮しても早期に現金化できるメリットが大きいことなどを挙げた。また、同社が11月にベインの提案に反対を表明した後、デューデリジェンス(資産査定)のために得た情報を破棄する請求をしたが応じていないことも問題視している。

18日の富士ソフト株は一時前日終値比1.5%高の9799円と、ベインの提案価格を上回って推移している。

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