(ブルームバーグ):ホンダの青山真二副社長は18日、日産自動車との経営統合など含めてさまざまな選択肢を検討しているが、話せるようになったタイミングで説明すると記者団にコメントした。持ち株会社設立についても検討しているのは事実と述べた。
これに先立ち、日経新聞は同日朝にホンダと日産が経営統合に向けた協議に入ると報道していた。実現すればトヨタ自動車と戦える規模感の企業が誕生し、世界的な競争に打ち勝つためのより有利な立場を得ることになる。また経営統合の協議入りについて、ホンダと日産自動車が23日にも正式に発表する見通しだとTBSが報じた。
ホンダと日産が手を組む背景には電気自動車(EV)や自動運転といった新技術の台頭や中国の新興メーカーの急成長などで自動車業界が激変する中、一定の規模を確保して競争に勝ち抜こうとする狙いがある。

ホンダと日産はすでに合併に関する予備的な協議を行っていると、協議が非公開であるため匿名を条件に関係者が明かした。三菱自動車が加わる可能性もあるとしている。協議は初期段階で、合意に至らない可能性もあるという。
報道を受け、18日の東京市場で日産株は大幅に上昇。ストップ高となり、ブルームバーグの記録に残る1974年以来の日中上昇率となる前日比24%高の417.6円でこの日の取引を終えた。三菱自株も20%のストップ高。ホンダ株終値は、同3%安の1244.5円だった。
みずほ証券の聲高健吾クレジットアナリストは18日付のリポートで、「検討のスピード感や規模感はサプライズ」としながら、背景の状況や直近の報道内容を踏まえると「両社が最終的に統合する可能性は高まっているものの、合意に至らない可能性もまだ相応にある」とみていると指摘。両社は日米中など主要市場で競合関係にあることから、「統合に向けて解決・合意すべき事項は多く、その実現は容易ではないだろう」と述べた。
日産は仏ルノーと資本関係を見直し、ホンダは米ゼネラル・モーターズ(GM)とのEVなどでの協業計画が中止となるなど長年の協業相手との関係が揺らぐ中、両社は今年3月、車の電動化や知能化に向けた協業の検討を開始する覚書を締結したと発表。8月には協力の枠組みに三菱自も合流することを公表した。ホンダの三部敏宏社長はその際、今後の資本提携の可能性について「別に否定するものではない」と述べていた。
事情に詳しい関係者によると、日産株36%を保有する筆頭株主のルノーは、今回の交渉を前向きに捉えている。ルノー側は日産に資金を投入するつもりはなく、同社が自ら経営強化策を見いだすことを強く望んでいる。
報道の通りに合併が成立すれば、日本の自動車業界は事実上、ホンダ・日産陣営とトヨタ陣営の2つの主要なグループに集約されることになる。米テスラなど含め世界の大手自動車メーカーと競争するためのリソース確保につながる。
重複事業多く
日産とホンダは日経報道について自社が発表したものではないとした上で、各社の強みを持ち合い、将来的な協業について、報道内容を含めたさまざまな検討をしているが、決まったことはないと述べた。三菱自の広報担当者は電話取材に、同社が発表したものではなく、現時点で何も決まっていないと話した。
日産は足元で業績が急速に悪化し、生産能力の削減や9000人のリストラに迫られている。ホンダも好調な二輪事業で収益を支えているものの、長年の課題である四輪事業の収益性の低さは解決されておらず、「弱者連合」との冷めた見方もある。
いちよしアセットマネジメントの秋野充成社長は、両社の経営統合報道について、業界での弱い者同士の統合で、大きな動きというわけではないとコメント。両社が統合してもEVで覇権は握れないだろうと述べた。英調査会社ペラム・スミザーズ・アソシエイツのアナリスト、ジュリー・ブート氏は両社は事業領域に重複する部分も多く、統合に向けて解決すべき課題は多いと指摘した。
ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストはリポートで、経営統合が実現すれば経営的に厳しい日産には救済の効果が短期的に期待できるとする一方、業績好調なホンダにとって短期的なメリットは乏しく、長期的観点から自動運転や電動化などの先進技術導入やソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)などでの開発費や設備投資の負担軽減の効果を期待することになるだろうとした。
(ルノー関係者、アナリストのコメントを追加し、更新します)
--取材協力:Siddharth Vikram Philip、Albertina Torsoli、David Welch、長谷川敏郎.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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