2|卵子凍結に関する年齢や期間と妊娠率

次に、これまでに実施された卵子凍結について、採卵時の年齢、初めて凍結卵子を使用した際の年齢、凍結卵子の使用までの期間、凍結卵子を使用して妊娠に至った人数(妊娠率)についても回答を求めた。その結果、採卵時の年齢については、医学的卵子凍結183人、社会的卵子凍結4,567人に関する回答が得られた。初めて卵子凍結を使用した際の年齢、凍結卵子の使用までの期間、凍結卵子を使用して妊娠に至った人数(妊娠率)については、医学的卵子凍結9人、社会的卵子凍結384人に関する回答が得られている。

医学的卵子凍結では、10歳代から24歳までが23人(12.6%)、25-29歳が29人(15.8%)、30-34歳が46人(25.1%)、35-39歳が56人(30.6%)、40歳-49歳が29人(15.8%)であった。社会的卵子凍結では、10歳代から34歳までが769人(16.8%)、35歳-39歳が2,075人(45.4%)、40歳-49歳までが1,024人(22.4%)、不明が699人(15.3%)であった。

採卵時の年齢(年代別)では、医学的・社会的ともに、35-39歳の割合が最も高いが、医学的適用では、10歳代~20歳代の占める割合が28.4%と比較的若い年齢での採卵が目立っていた。一方で、社会的適用では、30歳~40歳代が全体の81.7%を占めており、社会的卵子凍結では不妊治療はしていないが妊孕性の低下を考慮して30歳代40歳代が実施している傾向が明らかとなった。

また、初めて凍結卵子を使用した際の年齢について、医学的卵子凍結では、30-34歳が1人(11.1%)、35-39歳が5人(55.6%)、40-44歳が3人(33.3%)であった。社会的卵子凍結では、20歳から34歳までが72人(18.8%)、35-39歳が53人(13.8%)、40-49歳までが48人(12.5%)、不明が83人(21.6%)であった。初めて卵子凍結を使用した年齢について、医学的適用は35歳から39歳において約5割を超えているのに対し、社会的適用では40歳から49歳までにおいて12.5%が実施している上に、20歳代の実施も4.9%認められることから、幅広い年齢層で活用されていることが分かる結果となった。

続いて、凍結卵子の使用までの期間については、医学的適用では期間に差がみとられないものの、社会的卵子凍結では、1年未満の割合が最も高く、採卵から比較的早い期間で使用を決めている傾向が明らかとなった。

さらに、凍結卵子を使用して妊娠に至った人数(妊娠率)は、医学的卵子凍結では3人(33.3%)、社会的卵子凍結では114人(29.7%)であった。今回の調査における医学的卵子凍結に該当するサンプル数が少ないため単純比較はできないが、この結果からは、少なくとも都内では、医学的適用と社会的適用における卵子凍結の妊娠率に大差は認められないと考えられる。

3|卵子凍結の理由

続いて、令和4年5月から令和5年4月の1年間の間に、卵子凍結を目的に来院した方に対し、卵子凍結をする理由について、多い順に上位2つまでの理由を(1)「2人の間に子どもが欲しいと思える相手(パートナー)がいない」、(2)「キャリアアップや趣味等、妊娠以外にやりたいことがある」、(3)「今すぐ妊娠することが現実的ではない」の中から回答を求めた。

その結果、上位2つの理由は同じだが、一番の理由が、医学的卵子凍結の方では、「今すぐ妊娠することが現実的ではないこと」であり、社会的卵子凍結した方では、「2人の間に子どもが欲しいと思える相手(パートナー)がいない」と、異なる理由が選択されていた。

上述の採卵時の年齢等と合わせて考えると、医学的卵子凍結では、不妊症に結びつく何らかの原因疾患を抱える比較的若い年齢層において、今現在妊娠することが現実的ではないことから卵子凍結をしている傾向が認められる。一方で、社会的卵子凍結では、現時点でパートナーがいない健康な30歳~40歳代が妊孕性の低下を考慮して、将来の妊娠に備えて卵子凍結を実施している実態が明らかとなった。