(ブルームバーグ):ハーシー・トラストは米国の企業の中でも珍しい存在だ。チョコレートメーカー、米ハーシーのクラスB株ほぼ全てを保有しており、同社の議決権の約80%を握っている。その影響力は、今年最大の合併合意となるはずだった米製菓大手モンデリーズ・インターナショナルによる予備的な買収提案を拒否したことで浮き彫りとなった。ハーシー・トラストはモンデリーズによる2016年の買収提案を含め、ハーシー買収を長年にわたり複数阻止してきた経緯がある。

ハーシー・トラストとは
同社ウェブサイトによると、ハーシーの創業者ミルトン・ハーシー氏が1905年に設立。同氏と妻が開設した低所得世帯の子供向け寄宿学校や、植物園、劇場などの施設を運営する非営利団体などを支援する。
ハーシー・トラストはペンシルベニア州当局の規制下にある。長年論争やスキャンダルに悩まされ、2016年には、役員の任期や報酬制限といったガバナンス改革を巡り同州司法長官と合意した。
なぜ設立されたのか
ペンシルベニア州にあるハーシー氏の地元コミュニティーバンクとして設立され、住宅ローンや預金口座、融資を手掛けてきた。ハーシー従業員の給与支払いも管理した。
今は主にスクールトラストを管理しており、プロパブリカ・ノンプロフィット・エクスプローラーによると、同トラストの23年時点の資産は240億ドル(約3兆6500億円)に上る。
モンデリーズとの協議はどうなったのか
ハーシー・トラストはモンデリーズの提示額が低過ぎるとして拒否した。事情に詳しい複数の関係者がブルームバーグ・ニュースに語った。ハーシー株は23年のピークから3分の1程度下落している。
CNBCによると、ハーシーがアナリスト予想を下回る7-9月(第3四半期)利益を発表した直後、モンデリーズは協議を始める好機と見ていた。
他にどのような買収を阻止したのか?
ハーシー・トラストは長年にわたり、複数の買収を阻止してきた。同社ウェブサイトによると、1980年代からハーシーと共に「企業の乗っ取りや敵対的買収」を懸念していた。
2002年には、ネスレとウィリアム・リグレー・ジュニアがそれぞれハーシー買収を提案したが拒まれた。16年、モンデリーズが買収価格を引き上げる考えを示したがこれも断られ、ハーシーは買収されない企業だという見方が強まった。
次の一手は
CFRAのアナリスト、アルン・スンダラム氏によると、モンデリーズのディールが立ち消えになっても、ハーシー・トラストは他のオファーにはオープンな姿勢を示す可能性がある。「まだ別の企業が興味を示すかもしれない」とし、ペプシコやネスレを候補に挙げた。
TDカウエンのアナリスト、ロバート・モスコウ氏は、ハーシー・トラストの経営陣交代や同社資産のハーシー株集中、ハーシーに対する外部の脅威などを踏まえると、ハーシー・トラストがハーシーの支配権を手放してもよいと考える価格が存在する「可能性は十分」あると指摘した。
原題:What Is the Hershey Trust and Why Can It Block Deals?: QuickTake(抜粋)
--取材協力:Janet Freund.
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