西武ホールディングスは12日、プリンス系ホテルなどが入る複合商業ビル「東京ガーデンテラス紀尾井町」(千代田区)を約4000億円で米投資会社ブラックストーンに売却すると発表した。売却で得る資金を株主還元などに充てる計画も示した。

西武HDの発表資料によると、取引は来年2月末までに完了する予定で、売却後も同施設の運営・管理を担う。同社は売却益として約2600億円の計上を見込むとし、今期(2025年3月期)純利益予想を従来の840億円の3倍超の2660億円に上方修正した。

株主還元策では、発行済み株式(自己株を除く)の8.7%、700億円を上限とした自社株買いのほか、期末配当を従来予想の1株当たり15円から25円に引き上げ、年間配当を同30円から40円に増配する。また、ホテル事業の価値向上のための成長投資として品川プリンスホテルの改装などに約500億円を投資する。

今回の取引額は、国内不動産物件としては、政府が保有分をヒューリックなどに売却した大型複合ビル「大手町プレイス」(4364億円)に次ぎ過去2番目の規模となる。低い状態が続く金利や円安・ドル高を背景に、日本の不動産市場に強気な姿勢を示す海外投資家の動きを象徴する大型案件と言えそうだ。

ブラックストーン不動産部門日本代表の橘田大輔氏は、案件獲得では「ホテル事業に対するグローバルな知見を評価していただいた」とコメント。プリンスホテルの提携先であるマリオットとの関係も生かした顧客誘致強化のほか、オフィス共有部分やレストランの改装など物件の価値向上に数年で数十億円を投資する方針を示した。

同ビルは、かつて「赤プリ」の愛称で親しまれ、2011年に閉館した赤坂プリンスホテルの跡地に建てられた。36階建てのビルを含む同施設は16年に完成。プリンスブランドの最上位ホテル「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」やLINEヤフーが本社を構えるオフィスフロアのほか、住居棟や小売店舗などで構成される。

西武HDは、24年5月発表の長期戦略で不動産事業を成長の中核と位置付け、35年度の連結営業利益目標を23年度比2倍強の1000億円以上に引き上げた。流動化で得た資金を新規投資する「不動産回転型事業」に参入。保有したまま運営する事業モデルとの決別を宣言した。同ビル売却はその試金石として同時期に発表された。

(主語を入れ替え、株主還元策などを追加して更新します)

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