介護の外部化の難しさ、ただし、今後は子女に多くを頼る介護は更に厳しい状況へ

中国では2016年に公的介護保険制度の試行が開始され、2025年の全国導入を目指している。政府が指定した試行対象都市は49都市まで拡大しており、2023年末時点で加入者数は1億8,331万人、受給者数は134万人となった。

その一方で、介護給付の対象は要介護度が高いケースに限定される傾向にあり、その給付も限定的だ。たとえ介護保険制度があったとしても生活サポートや経済的な負担がその家族に大きくのしかかる状況(家族化)は変わっていない。制度の設計上、高齢者の生活サポートを含め、介護の全面的な外部化は難しい状況にある。

加えて、現時点で介護の家族化がある程度可能な背景には、多くの高齢者が一人っ子政策前に出産したことで、介護の主な担い手である子どもが複数人存在する点も大きい。調査によると、60歳以上の高齢者のうち、子どもがいる割合は98.0%で、平均人数は2.6人であった。都市の高齢者の場合は平均2.3人、農村は平均2.9人となっている。年代別でみると60代は平均2.1人、70代は平均2.9人、80代では平均3.9人であった。現時点では子どもが複数人いることで、家族による介護や生活サポートが何とか成り立っている状況であろう。しかし、今後は一人っ子政策の影響によって子女の数は減少するため、家族に頼る生活・介護サポートはより厳しい局面を迎えることになる。介護事業者の増加やサービス価格の適性化、介護専門職の就業強化などもあるが、長期的に考えると介護保険制度の給付のあり方そのものを見直していく必要もあろう。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 片山 ゆき)