フランスの高級品ブランドグループ、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは、イタリアのトスカーナ地方やスペインのマヨルカ島などに宿泊施設を持つ高級ホテル運営会社に出資した。旅行などホスピタリティー事業を強化する。

事情に詳しい関係者によると、LVMHは仏レ・ドメーヌ・ド・フォントニーユの株式約20%を取得した。LVMHとフォントニーユは今回の投資について共同で発表したが、取得規模には触れていない。発表資料によれば、ジュネーブを拠点とする投資会社アナイス・ベンチャーズも少数株主として出資した。取引額は開示されていない。

LVMHはフォントニーユの筆頭株主となる。同社の共同創業者フレデリック・ビウッセ氏が10日のインタビューで明らかにした。同氏とギヨーム・フーシェ氏によって2016年に設立されたフォントニーユは、フランスとイタリア、スペインに12の施設を展開している。

多角化を図りたいLVMHは、体験型ラグジュアリー分野への関心を強めている。

中国を中心とした需要の落ち込みで高級品部門が打撃を受けていることが背景で、LVMHの株価は08年以来最大の下落率となる方向。同社傘下のブランド、ルイ・ヴィトンのハンドバッグやクリスチャン・ディオールのジャケットといった高額商品の購入に消費者は消極的になっている。

LVMHはすでに、ロンドンの「ザ・カドガン」ホテルや豪華列車「ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス」を運営するベルモンドを所有している。「シュバル・ブラン」ホテルチェーンもLVMH傘下だ。

フォントニーユのリンダ・ハジ最高経営責任者(CEO)によると、同社はハイシーズンに1泊400-1000ユーロ(約6万4000-15万9000円)を支払うことをいとわない若い顧客層を引き付けている。

フランスで「宮殿」と呼ばれる最高級クラスのホテルが1泊当たりの料金を1500ユーロ以上に値上げしたにもかかわらず、フォントニーユは現在の価格帯を維持する方針だとビウッセ氏は話した。

フォントニーユは有機栽培ブドウ畑を誇る仏プロバンス地方の施設や、パリから車で1時間足らずの距離にあるドメーヌ・ド・プリマールとして知られる女優カトリーヌ・ドヌーブ氏のシャトーなど、由緒ある施設を取得して運営している。

LVMHの出資により、フォントニーユはイタリアとスペインでの事業拡大が可能になるとハジ氏は説明。イタリアでは、優良不動産を購入する際に他のパートナーと共同投資を行う可能性もあり、新たな資金は大型物件の獲得にも役立つとも述べた。

LVMHは映画「オリエント急行殺人事件」などでロマンチックに描かれた列車サービス「オリエント・エクスプレス」の開発を加速させるため、今年に入り仏ホテルチェーン、アコーとの提携を発表している。

原題:LVMH Extends Its Bet on Luxury Hospitality With Fontenille Deal(抜粋)

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