韓国企業は、トランプ次期米大統領が電気自動車(EV)向け税控除を廃止する可能性を懸念し、米国のEV用バッテリー工場建設に540億ドル(約8兆1000億円)を投資する計画の再考を迫られている。

一部韓国企業は、EV需要の減少に加え、トランプ次期政権の政策を不安視し、進行中の一部工場の建設を遅らせるか一時停止している。慎重な扱いを要する問題を理由に事情に詳しい複数の関係者が匿名を条件に語った。

米ゼネラル・モーターズ(GM)向けにカソード(電極)を製造するポスコフューチャーエムは9月の規制・監督当局への届け出で、「現地の状況」を理由にカナダ・ケベック州の工場の完成を遅らせると明らかにした。

韓国電池メーカー専門の調査会社SNEリサーチのケニー・キム最高経営責任者(CEO)は、企業はまだ行動を起こしていないが、トランプ氏がEV市場への政府のインセンティブをどの程度減らすか多くの企業が「不安を抱いている」と指摘する。

トランプ氏はかねて、インフレ抑制法を(IRA)通じてEV普及に資金を投じるバイデン政権の取り組みを批判してきた。次期政権では燃費基準引き下げを検討しており、ロイター通信の11月の報道によると、7500ドルの消費者向け税控除が廃止される可能性がある。

巨額の補助金や税控除などのインセンティブがなくなれば、米国で何万人もの雇用が脅かされ、長年取り組んできたEVサプライチェーンを中国から移行させる努力が水泡に帰すことになりかねない。

EV需要低迷とバッテリー価格の下落に苦しむ韓国企業の利益にも打撃を与える恐れがある。中国のサプライヤーへの依存低減に向け、韓国企業は米国の重要なパートナーと位置付けられる。

フォード・モーターやGMが使用するEV用バッテリー向けのサプライヤー、エコプロ・マテリアルズのビョンフン・キムCEOは「IRAをこれまで非常に重要な問題と捉えてきた。政策が変更されれば、当社の戦略も変えざるを得ないかもしれない」と説明した。

リショアリング・イニシアチブによれば、2021年から24年1-3月(第1四半期)までの米国への外国直接投資およびリショアリング(製造拠点の国内回帰)の約半分が、EV電池関連だった。韓国から米国への直接投資やリショアリングは、23年に北米で2万360人の雇用を創出し、これは他の国・地域に比べ最も多かった。

原題:Trump EV Skepticism Threatens $54 Billion in Korean Investments(抜粋)

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