AI植田総裁は、これまでの利上げは一定の効果がみられているが満足していないと回答
ここで、先にいくつかの注意点を述べておきたい。筆者らの目的は植田総裁や日銀審議委員のAIを作成することによって本音を考察することにある。植田総裁や日銀審議委員の発言を生成し、フェイク発言として流布させることは目的ではない。
また、当レポートではChatGPTが生成した文章を紹介しているが、アウトプットは直接用いないように筆者が要約して示した。日銀が公表した文章は一般に公表されたものだが、それ以外にChatGPTが読み込んだテキストデータの出所については確認が出来ないからである。
他にも、ChatGPTのアウトプットはあまり安定的でないことにも留意が必要である。今回は同じ質問を複数回実行することで出来るだけ安定的な回答を選ぶようにしたが、安定性を厳密に評価したわけではない。
「AI植田総裁」に質問をする際には、総裁会見などでいつも聞かれるようなものでは「建前的」な回答になってしまう可能性が高いため、様々な付帯条件を付けて本音を引き出すように工夫した。結果をまとめると、以下である。
✔ 中立金利は低い水準にあると考えられる
✔ 日本は完全にデフレ脱却したとは言い難い
✔ 人手不足は賃金上昇を通じて消費者物価の上昇に寄与しインフレ率を押し上げる
✔ インフレ率が高くなりすぎるリスクは比較的低い
✔ 適切な為替水準を示すことは難しい
✔ これまでの利上げは一定の効果がみられているが満足していない
✔ 為替動向は金融政策の一要素でそれだけが決定要因ではない
むろん、これらが植田総裁の本音である保証はない。ChatGPTがこれまで学習してきたデータと植田総裁の講演テキストの内容を勘案すると、このような「本音」を持っているだろう、ということ以上でも以下でもない。しかし、いずれも「建前的」な発言よりも踏み込んだ発言で、外野が予想する「本音」のイメージと近いように思われる。
なお、各委員のAIにも「25年に利上げをする可能性」について尋ねてみた。「本音」では、利上げが続く可能性が高いと考えているAI委員がほとんどだった。


(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)