5日の日本市場では円相場が上昇。日本銀行の中村豊明審議委員が記者会見で、利上げに反対しているわけではないと述べたことで午後に上げ幅を拡大した。債券は下落し、株式は上昇した。

中村委員は広島県での講演後に会見し、年内の利上げは今後出てくるデータで判断すると発言した。同氏は7月の利上げに反対しており、市場ではハト派寄りとみられていた。前日の一部報道で12月利上げの観測が急速に後退していただけに、発言を受けて年内の利上げが改めて意識され、円買い・債券売りにつながった。

為替

東京外国為替市場の円相場は上昇し、1ドル=149円台後半で推移。日銀の利上げ見送り観測による前日の円安は行き過ぎとの見方が広がり、買い戻された。午後は中村審議委員が年内の利上げについて、今後出てくるデータで判断すると発言したことで一段高となった。

三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジストは、前日から利上げ観測が後退する流れとなっていた中、「中村委員の発言で改めて12月に利上げが実施される可能性が残っていることが意識された」と述べた。

債券

債券相場は下落。前日に日銀の12月利上げ観測の後退で急騰した反動売りに加え、午後の中村審議委員の会見が予想されていたほどハト派的ではなかったことから、取引終了にかけて売りが強まった。

大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジストは、中村委員の会見は市場で思われていたほどハト派的ではない発言が目立ち、先物に売りが強まったと指摘。日銀の情報発信について「12月は利上げ見送りと言い切れば円安が進んでしまうことを懸念しているのだろうが、市場の織り込みを何とかしようとしてコミュニケーションが複雑になっている」と述べた。

先物は小幅高に転じる場面もあった。財務省がこの日実施した30年国債入札を無難に通過し、安心感から買い戻しが入った。

30年債の入札結果によると、最低落札価格は96円55銭と市場予想と一致した。小さいと好調を示すテールは12銭と前回15銭から小幅縮小。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.46倍と前回の3.44倍を上回った。

新発国債利回り(午後3時時点)

株式

東京株式相場は上昇。米経済の現状に楽観的な見方を示した連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の発言を受け、リスク選好の買いが先行した。米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の反発を背景に、アドバンテストなど半導体関連銘柄の一角が高い。

ただし上値は重く、TOPIXは午後に一時下げに転じた。岡三証券の内山大輔シニアストラテジストは「今週の上げは大きく、後場に入って利益確定の動きが見られた」と指摘した。

セゾン投信の瀬下哲雄マルチマネジャー運用部長は、米経済に対する楽観的な見方は依然維持されていると話す。一方、日銀の利上げが「避けられなくなりつつある」ことが日本株の重しになったと述べた。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:我妻綾.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2024 Bloomberg L.P.