(ブルームバーグ):日本銀行が12月の金融政策決定会合で追加利上げを決定するとの金融市場における期待は、日本の一部メディアが利上げの可能性に疑問を投げかけたことで急速に後退し、外国為替市場での円安圧力となっている。
市場の金融政策見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)では5日、12月18-19日の会合で日銀が利上げする確率を37%織り込んでいる。11月29日の66%と比べると、市場関係者の利上げ観測は大幅に低下した格好だ。日銀の中村豊明審議委員が5日午後の会見で、利上げに反対しているわけではないとの見解を示した後も、OISの織り込みはほとんど変わらなかった。

時事通信の4日の報道によると、日銀内部では円安などによる消費者物価上昇の大きなリスクがない限り、早期の利上げは避けるべきだとの見方が強まっている。これは、日本経済新聞が11月30日に報じた植田和男総裁のインタビューで、インフレと経済動向が日銀の予測通りに推移しており、利上げは「間近に迫っている」と発言したこととは対照的な内容だ。
みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストは4日のリポートで、時事通信の報道について日銀の意図で情報が流されたのであれば、「12月会合での利上げを決め打ちしていると誤認されることを防ごうとしているのかもしれない」との見方を示した。
米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースにも先行き不透明がある中、日本と海外主要国との金利差が依然として大きいことは、為替市場での円安圧力につながりかねない。
市場でハト派とみられてきた日銀の中村審議委員は5日午前の講演では、賃上げの持続性にまだ「自信を持てていない」とし、「経済の回復状況に応じて緩和度合いを慎重に調節していくことが重要な局面だ」と発言。一方、午後の記者会見では今後出てくるデータで12月の利上げを判断するとの考えを示し、年内利上げの可能性にも「反対しているわけではない」と述べた。
4日に対ドルで一時151円台前半まで1%以上下落した円相場は、急激な変動の揺り戻しに加え、中村委員の会見を受けた5日午後は149円台後半まで円が買い戻されたものの、心理的節目の150円台に再度軟化する場面も見られる。
大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジストは中村委員の会見について、ヘッドラインだけ見ると市場で思われていたほどはハト派的ではない発言が目立つと指摘。「市場とのコミュニケーションが複雑になっている」との見方を示した。
(中村日銀審議委員の講演・会見を受けて2段落以降の情報を更新します)
--取材協力:船曳三郎.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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