世界最大の資産運用会社、米ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は、同社をインフラやプライベートクレジット投資の分野でトップ5の運用会社にするため、年間約250億ドル(約3兆7700億円)を投じている。今は買収先の従業員を引き留めすることに主眼を置いている。

今年手掛けたプライベートクレジット会社HPSインベストメント・パートナーズやグローバル・インフラストラクチャー・パートナーズ(GIP)の買収に当たり、ブラックロックは従業員引き留めのため13億3000万ドル、1人当たり約100万ドルを確保した。そうしたメンバーは、既存の投資戦略から生じた報酬の大部分も維持している。

狙いは、買収攻勢が効果を生むようにすることだ。小規模な非公開企業でキャリアを築いた人材に、ブラックロックにとどまる理由を示すのが、フィンク氏にとって主な課題となる。

買収についてエバコアISIのグレン・ショア氏は、「10年かけたオーガニック成長に比べ市場参入が早まる」一方、時間とともに資金や権限、統合の問題が生じ「実行リスクを伴う」と3日付のリポートで指摘した。

ブラックロックはアポロ・グローバル・マネジメントやブラックストーン、KKRなどが主導してきたオルタナティブ(代替)戦略を手掛ける最注目の運用会社に転身している。

保険会社や年金、富裕層顧客、政府系ファンド(SWF)が求めるオルタナティブ資産の提供を通じ、フィンク氏はプライベート資産を含むクレジット市場の支配を目指す。当初から、こうしたオルタナ資産について専門知識を持つ人材を、ブラックロックの株式や高額の引き留めの報酬、企業戦略への発言権と引き換えに取り込もうとしている。

フィンク氏は3日、HPSの買収発表後、「統合は評価額を決定する前、最初の会話から始まる」とアナリストに語った。

HPSの120億ドルでの買収が完了すれば、ブラックロックは6000億ドル近いオルタナティブ資産を管理することになる。GIPも合わせた二つのディールは、ブティック型のプライベート資産運用会社の案件としては過去最大規模となる。

原題:BlackRock Has $1.3 Billion Pay Pot to Retain New Rainmakers (1)(抜粋)

--取材協力:Lucca De Paoli、Silas Brown.

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