(ブルームバーグ):楽天グループがドル建て社債の発行条件を決めた。発行額は5億5000万ドル(約830億円)で、発行利回りは約3年ぶりの低水準となった。長期にわたる赤字の解消を目指す同社の取り組みに対し投資家の信頼が高まっていることがうかがえる。
楽天Gは米東部時間4日、償還期限の定めがなく発行から5年後に償還(コール)が可能な永久劣後債を起債した。発行利回りは8.125%に決まったと、事情に詳しい関係者が明かした。ブルームバーグ集計データによると、同社の米ドル建て債としてはS&Pグローバル・レーティングスによる投資適格級の格付けを失った2021年以来の低水準。関係者によれば、当初は参考利回りとして8.375%付近を投資家に提示していた。

同社のドル建て債は今年1月と4月のシニア債に続いて今年3度目で、利率は今回が最も低い。モバイル事業の赤字幅が縮小する中、同社の信用リスクに対する投資家の見方が改善してきたことを示唆している。米国の利下げや景気のソフトランディング(軟着陸)への期待から、格付けが投資適格を下回るハイイールド債の発行環境が良好なことも追い風となった。
土屋アセットマネジメントの土屋剛俊社長は、前回の起債時と比べて利回り水準が縮小し、ポジティブだと指摘。その上で、弁済順位が低くリスクが相対的に高い「劣後債を出せるようになったのは大きな変化」だとの見方を示した。
今回の調達資金は、2025年に予定する円建て劣後債の繰り上げ償還資金に充てる予定だ。ブルームバーグが集計したデータによると、25年は上半期に総額4000億円の円建て普通社債の償還期限も迎える。楽天Gの広報担当者によれば、普通社債の償還資金は前回のドル債などで既に手当てが済んでいる。
巨額の設備資金を投じたモバイル事業は7-9月期に555億円の損失となり、赤字幅は前年同期(812億円)から縮小した。11月にはみずほフィナンシャルグループと資本業務提携を結ぶなど「楽天経済圏」の拡大を図っている。
原題:Rakuten Sells Its Lowest-Yielding Dollar Bonds Since 2021(抜粋)
--取材協力:日向貴彦、Josyana Joshua.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2024 Bloomberg L.P.