(ブルームバーグ):米国と中国の貿易戦争がエスカレートする中、今度はガリウムやゲルマニウムといった目立たないが極めて重要な2つの金属が新たな駒として登場した。バイデン米政権が対中テクノロジー規制強化を打ち出したことを受け、中国政府は3日、対抗策としてガリウムとゲルマニウムの対米輸出を禁止すると発表。中国は昨年、両金属の輸出規制をすでに導入し、価格上昇を招き、貿易の流れを揺るがしていた。
ガリウム、ゲルマニウムとは何か
いずれも銀白色で、一般に「マイナーメタル」と分類されるガリウムとゲルマニウムは通常、自然界で単体では発見されない。亜鉛やアルミナなど主流の原材料を中心とした精錬所から、副産物として低純度で生産されている。
市場規模はどのくらいか
銅や石油のようなコモディティーと比較すると、こうした金属の市場規模は極めて小さい。政府のデータによると、例えば、米国のガリウムメタルとガリウムヒ素ウエハーの輸入額は2022年に約2億2500万ドル(約340億円)にとどまった。だが、ガリウムなどは戦略的産業で使用されるため、供給が途絶えれば大きな影響が出る可能性がある。
ガリウムとゲルマニウムは何に使われるのか
ガリウムとゲルマニウムは半導体製造や通信、防衛産業で幅広い特殊用途がある。ガリウムは伝送速度や効率を向上させるため、複数の元素を組み合わせる化合物半導体に使用される。また、テレビや電話のスクリーン、太陽光パネル、レーダー装置でも必要とされる。
一方、ゲルマニウムは光ファイバーや暗視ゴーグル、宇宙探査などに使われる。多くの衛星はゲルマニウムベースの太陽電池で電力供給を受ける。
中国からの供給はどれほど重要なのか
こうした市場は小規模でニッチなことから、貿易フローをたどることは難しいが、欧州連合(EU)の重要原料に関する昨年の調査によれば、中国による供給はガリウムで全体の94%、ゲルマニウムでは83%を占め、両金属の提供元として圧倒的な世界トップとなっている。
金属業界の情報を提供するCRUグループによると、ガリウムやゲルマニウムの代用品は存在するものの、はるかにコストが高く、意図した用途での性能が妨げられる可能性もある。
他国で生産を増やすことはできるか
いずれの金属もとりわけ希少というわけではないが、加工コストは高い。中国が長期にわたり比較的安価に輸出してきたため、他国・地域には抽出する設備が乏しい。中国が生産を増やしたため、ドイツやカザフスタンなど他国は後退を余儀なくされた。
昨年の規制発表以降、ガリウムの価格が80%上昇し、ゲルマニウムは2倍余りに値上がりした。価格上昇が続けば、需要を満たすため、他の供給国の生産拡大が見込めるとアナリストは指摘している。
他にはどこで生産されているのか
中国を除くと、ガリウムの生産能力を持つ国としては、アルミナの副産物として生産するロシアやウクライナに加え、亜鉛の副産物として韓国や日本も挙げられる。北米では、カナダ資源大手テックリソーシズのブリティッシュコロンビア州トレイル精錬所で亜鉛や鉛、その他の金属と共にゲルマニウムが回収されている。
リサイクルも鍵になるかもしれない。工場で出るスクラップはすでにガリウムとゲルマニウムの供給量の一部を占めている。米地質調査所(USGS)によれば、退役した戦車や軍用車両の窓からもゲルマニウムが回収されている。
原題:Why China Is Banning Export of Niche Metals to the US: QuickTake(抜粋)
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