4日の日本市場では債券が上昇。韓国の政情不安を受け、安全資産に対する需要が高まったほか、日本銀行が年内の利上げを見送るとの見方も出て、午後の取引で先物が上げ幅を広げた。

一方、円は対ドルで150円ちょうど付近に下落。リスク回避の円買いが一服し、ドルが買い戻されている。株式は東証株価指数(TOPIX)が反落し、電力や陸運、銀行など内需セクターが安い。

韓国の尹錫悦大統領は3日、緊急の国民向けテレビ演説で「非常戒厳」を宣布。政権のまひを狙う野党の動きを封じる決断を下し、同日のニューヨーク市場で韓国ウォンが急落した。しかし、野党が多数を占める国会議員の反対に屈した形で早々に非常戒厳を解除、野党は内乱罪で大統領の弾劾手続きを進める姿勢だ。

IGアジアのマーケットストラテジスト、ジュンロン・イープ氏は「尹大統領の指導力に対する不透明感が続き、リスクテイクは当面抑制された状態が続く可能性が高い」との見方を示す。

債券

債券相場は上昇。韓国の政情不安を受けた安全資産買いの動きに加え、日銀が年内の利上げを見送るとの見方が一部で浮上し、午後に入り先物が上げ幅を広げた。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、リスク回避の日本国債買いが優勢で、市場では「長期金利の1.1%が天井として意識されている」と述べた。3日に行われた10年債入札で押し目買いの強さを確認したことも影響していると言う。

金融政策見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)が織り込む12月利上げの確率は、前日の6割前後から3割台に低下した。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは、日銀が12月に利上げを見送った場合、長期金利(新発10年債利回り)の1.1%台乗せは遠のくだろうと予想する。

外国為替

東京外国為替市場の円相場は、対ドルで一時150円台前半まで下落。韓国の政情不安を受けたリスク回避の円買いが一服し、ドルが買い戻された。

ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、韓国の戒厳令は一過性の材料で、収束の方向で落ち着いていると指摘。一方、強い米求人件数を受けてもドルはそれほど買われず、週末の「米雇用統計で12月の利下げを見極めたい向きが多い」との認識を示した。

あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、午前は韓国懸念で円高が進んだ分の揺り戻しと実需のドル買いの動きだと説明。午後は日銀金融政策を巡る臆測で円金利が低下し、つられてドルが戻していると話した。日本時間今夜には米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の発言機会、週末には雇用統計があり、「上下とも攻めにくい」とみている。

株式

東京株式相場はTOPIXが下落。前日に大幅高した反動に加え、パウエルFRB議長の発言や週末の米雇用統計の発表を控え様子見姿勢が強い中、目先の利益確定や持ち高調整の売りが広がった。

東証33業種は電気・ガスや銀行、陸運、海運、建設株など内需セクターが下げ、陸運では山手線など初乗り運賃の値上げ申請が一部報道で伝えられたJR東日本が安い。一方、11月の既存店売上高が伸びた良品計画を中心に小売株は上昇。三菱重工業やIHIなど防衛関連の上げも目立つ。

T&Dアセットマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダーは、きょうの下落は前日に大幅高した余波で、利益確定売りが優勢だと分析。防衛関連の上げについては「朝鮮半島のパワーバランスに影響すれば当然、日本にも及ぶだろう」と語った。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:横山桃花、Georgina McKay.

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