(ブルームバーグ):東京ガスは月内にも投資家向け株主通信を発表する予定だ。物言う株主(アクティビスト)のエリオット・インベストメント・マネジメントによる株保有が明らかになっており、今後の不動産事業戦略について言及するかに注目が集まる。
19日付の大量保有報告書でエリオットは東京ガス株を5%保有していることが明らかになったが、今後、中核事業との関連が薄い不動産などの資産売却を求めるとみられる。エリオットは東京ガスの膨れ上がった不動産ポートフォリオの価値を最大1兆5000億円とはじく。
インフラ関連企業が都市部に不動産を所有していること自体は珍しくない。ただ大阪ガスや関西電力など他社と異なり、東京ガスは都内の主要地域やその周辺に不動産を持っているため、アクティビストの最優先ターゲットになったようだ。
ゴールドマン・サックスの9月のリポートによれば、東京ガスの不動産含み益は4470億円と同業に類がないほど巨大で、同社の時価総額の4分の1強に相当する。

かつて同社の工場があった豊洲には卸売市場が建てられ、周辺がゼロカーボンシティとして開発中だ。2003年製作の映画「ロスト・イン・トランスレーション」に登場したパークハイアット東京ホテルのある新宿パークタワーも同社所有。この物件はかつてのガス貯蔵施設の上に立てられた。
仮に同社がエリオットの要求に応えるとすれば、投資目的で保有する株式や不動産を処分して売却益を株主に還元する可能性があると、スマートカルマに投稿するアナリスト、トラヴィス・ランディ氏はみている。
エリオットの保有が明らかになると、東京ガス株は急騰し、現在も高値圏にある。株主が何らかの変化に期待しているためだ。同社株の株価収益率(PER)はおおむね業界平均並みだが、どれだけ効率的に稼ぐかを示す自己資本利益率(ROE)は、調整後の四半期ベースで4%にわずかに届かず、大阪ガスの7%超比べて見劣りする。
大和証券の西川周作アナリストは25日付メモで、今後、エリオットがどのように提案や対話を行うか次第だが、不動産価値を即座に顕在化させるような動きとはならない可能性もあるだろうと記す。信用力に基づいた資金調達が事業にプラスに働く部分を評価する。一方、同氏は不動産以外の含み益にも注目する。出資先の英オクトパス・エナジーの株式の含み益を数百億円と試算する。
東京ガスの広報担当者はブルームバーグの問い合わせに、エリオットの株式保有についてはコメントを避けたが、不動産部門についてはボラティリティの高いエネルギー事業の収益を補完し、安定性向上にも貢献していると回答した。同部門は24年3月期時点で利益構成の10%を担い中期経営計画では成長分野の位置付けだ。
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