半導体商社の国内最大手、マクニカホールディングスの原一将社長は、国外でのシェアを高めるために海外企業を対象に合併・買収(M&A)することを「一つの手段として考えている」と述べた。

原氏は20日のインタビューで、成長市場と捉える東南アジア諸国連合(ASEAN)や中国でのシェアが低いため、「早急にシェアを高めておかないとリスクでもある」との認識を示した。その上で数千億円規模の投資は「十分ある」と述べた。

半導体事業以外には、市場ニーズや成長率が高いセキュリティー関連も「先を見越した時に伸びる」分野だとして、M&Aの優先順位は高いと述べた。

同社の資料によると、前期(2024年3月期)の半導体事業は国内が6割弱、中国が2割弱、それ以外のアジアが約2割という売上構成だ。米中分断のリスクも踏まえて中国以外にもアジアを強化したい考えで、原氏は注力するエリアにインドやASEAN、韓国を挙げた。

一方、原氏が描く国内戦略は海外のそれと異なる。同社資料によると半導体事業の国内販売シェアは足元で22%とトップで、半導体メーカーが代理店に求めることに対応していけばシェア拡大は可能だとみる。30年にシェア3割強とする目標に向け「M&Aを手段として拡大していこうという感じはあまり持っていない」と話した。

国内の半導体商社は主要メーカーが20数社ひしめき群雄割拠が続く。4月には菱洋エレクトロとリョーサンの経営統合でリョーサン菱洋ホールディングスが誕生するなど再編も相次ぐ。欧米やアジア圏では上位2社がシェアを占めて淘汰(とうた)が進んでおり、原氏は日本も「同じような傾向で動いていく」だろうと予想する。

事業拡大

同社は30年の長期経営目標として、前期比約2倍の売上高2兆円、同約2.4倍の営業利益1500億円以上を掲げる。売り上げの9割を占める半導体事業への依存を低め、サイバー攻撃対応製品などを手掛けるネットワーク事業や、自動運転やヘルスケアを含むサービス・ソリューション事業を強化していく方針だ。

原氏はそうした分野に注力する方針を掲げる理由について、かつての半導体のように最先端技術を見つけて事業化するチャレンジ精神が重要な点や、半導体に比べて運転資本が小さいネットワークやソリューションを拡大することでバランスシートを改善し、自己資本利益率(ROE)の向上にもつなげる点を挙げた。

同社株は今年2月には3000円に迫ったものの、半導体市況が調整局面にあることが響いて足元1800円付近を推移する。半導体市況で業績が大きく左右される状況からの脱却を図る側面もある。

いちよし経済研究所の大沢充周アナリストは同社の特徴を、「技術力もさることながら営業力が強い」ことだと指摘する。中国や東南アジア以外にも、長期的には欧米市場などで拡大していくのが望ましく、それができるかが課題だとした。

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2024 Bloomberg L.P.