野村ホールディングス(HD)傘下の野村証券の一部顧客が、同証が国債の相場操縦など不正取引の再発を防止する措置を講じたことを受け、停止していた同証との取引を再開したことが、関係者への取材で分かった。

非公開情報だとして匿名を条件に語った複数の関係者によると、国内メガバンクグループが取引を再開した。また、株式や債券の取引を停止していた生命保険会社のうち少なくとも4社も再開した。このうち多くは野村証が国債先物の不正取引に関する研修実施など再発防止策を公表した後に再開を決めたという。

野村HD広報担当の富田樹弘氏は、顧客の判断になるため「答える立場にはない」と述べた。

証券取引等監視委員会による9月下旬の勧告を受け、金融庁は10月31日に課徴金納付命令を発出した。野村証は同日、奥田健太郎社長や中島豊副社長ら経営陣の報酬返上や再発防止策を発表した。

野村証券の看板

財務省は、野村証が相場操縦を認めたことを受け、10月15日から1カ月間、日本国債の市場特別参加者(プライマリーディーラー)資格を停止したが、停止期間は11月14日に終了している。

投資銀行業務の一部などには影響が残っている。社債や地方債の発行体では野村証を主幹事に起用する動きも一部で出ているが、大型案件では野村証以外の証券会社の起用例が目立つ。

主幹事証券への取材によると、11月18日時点で20社が最速で11月中の起債に向けて準備しているが、16案件で野村証は主幹事に入っていない。

野村HDの北村巧最高財務責任者(CFO)は11月1日の決算会見で、「機関投資家の発注停止や社債の引き受け案件で相場操縦の影響が出ているのは事実」としながらも、「収益インパクトとしては限定的ではないかと考えている」と述べた。

野村HDが同日発表した2024年7ー9月期(第2四半期)連結純利益は、前年同期比2.8倍の984億円。富裕層向け、資金運用、投資銀行など主要業務が好調だった。証券監視委が9月25日に相場操縦の事実を公表して以降、株価は約19%上昇している。東証株価指数(TOPIX)の同期間の上昇率は2%未満だった。

(野村の業績や株価動向を追加して更新します)

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