富士ソフトに対して株式公開買い付け(TOB)による非公開化を目指している米投資ファンド、KKRが買い取り価格を1株9451円に引き上げた。富士ソフトが15日夜、公表した。

同社に対しては、競合の米べインキャピタルが1株9450円を提示していたが、KKRの価格はこれを上回る。富士ソフトの取締役会はKKRの新たな提案に対し、賛同を表明するとともに、株主に応募を推奨。べインの提案には反対を表明した。KKRの新たなTOB価格に基づいた企業価値は約6370億円。

KKRは2度に分けたTOBを実施中。5日に締め切った第1回TOB価格は1株8800円で、実施期間中に対抗して正式提案を出したべインの方が価格優位性があった。しかし、富士ソフトの取締役会は、KKRの第1回TOBに賛同を表明し、株主に応募を推奨した。買い取り株数の下限がなく、3Dなど大株主の応募により成立見通しであることなどを理由に挙げていた。

富士ソフトは、KKRによる第1回TOBに賛同表明をした際、べインの提案についても真摯(しんし)な提案だと考えているとしていたが、今回はべイン案に明確に反対の意思を表明。同社を巡るグローバルファンド2社の異例の闘いは一つの区切りを迎えたと言えそうだ。今回の決定に至る詳細については、追って開示される予定。

発表資料によると、KKRは第2回TOBを来週半ばにも実施する。第1回には大株主の3Dインベストメント・パートナーズなどが応じて成立、KKRの持ち株比率は株主総会での重要提案への拒否権を持つ3分の1を超えた。KKRは第1回の応募者に対して差額を補償する予定だとしている。

第2回の応募が19.25%(現在の持ち分と合わせて53.22%)に満たない場合はすべての買い付けを行わない。価格引き上げの理由について、KKRは富士ソフトの株価が8800円を超えて推移していることや、迅速に非公開化を進めるためだとしている。べインとの価格差は1円。

富士ソフトの発表を受け、KKRは15日夜、日本拠点の平野博文社長名で富士ソフトの賛同と応募推奨に感謝し「一日も早く企業価値向上に邁進(まいしん)できるよう、早期の非公開化完了を目指す」とするコメントを発表した。

KKRの価格引き上げについては、日経新聞電子版が15日夜、先に報じていた。

(KKRのコメントなど全体に情報を追加して記事を更新します)

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