超長期タカ派:米国の利下げが進んでも、日銀の利上げ路線は継続へ

中長期的にはハト派的な視点が示された一方、緩和方向へ転換する可能性は低いことも示された。超長期的にはタカ派と言える。具体的には「過去5回の利上げ局面では、米国の利下げ後に日本は利下げに転じたが、今回局面は過去とは異なる。日米の金融機関や企業、家計のバランスシート調整圧力が生じておらず、大幅な金融緩和が求められる局面ではない。米国経済の動向を確認するために一時的に様子見した後、追加的な利上げを展望していく状況と言える」というコメントがあり、FRBの利下げに合わせて日銀に対して利下げ期待が生じることがけん制された。おそらく来年中に利上げが停止した後も、利上げ路線を継続する方針が示される可能性が高い。利下げは遠いという意味では、超長期的にタカ派的であると言える。

あと1、2回の利上げは急いで、その後は比較的早い段階で利上げ停止か

以上を整理すると、短期タカ派であることから24年12月決定会合で25bpの利上げが決まる可能性が高いと、筆者は予想している。トランプ氏の政策メッセージなどで市場が不安定化すれば、25年1月に先送りされる可能性はあるが、現在の市場の動きが続いていれば、24年12月利上げは可能だろう。その後、25年4月の展望レポートのタイミングで経済見通しが「オントラック」であることを確認し、再び25bpの利上げを決めるだろう。しかし、中小企業の業績など下方リスクが顕在化する前に日銀は利上げを停止する可能性が高く、25年4月の利上げ後は政策維持が続く可能性が高い。特に25年7月の展望レポートでは、24年夏以降の円高方向への揺り戻しの影響からインフレ率が下振れる影響を考慮せざるを得ないとみられ、「オントラック」であると言いにくくなってくるだろう。その後は、しばらく様子見が続く見通しである。利下げの可能性があるとすれば、おそらく26年以降にFRBの政策金利が中立金利とみられる水準よりも低く利下げをしていくかどうか、ドル安円高が進むかどうか、に依存するだろう。
筆者は、26年にはドル円が130円程度まで下落し、日銀が小幅な利下げに踏み切るとみているが、現状では予想は困難である。

(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)