記事のポイント
・日銀「主な意見」(10月30-31日開催分)は、タカ派とハト派の意見が入り混じる内容で「短期タカ派、中長期ハト派、超長期タカ派」
・短期タカ派:「時間的余裕」は不要で、12月利上げの可能性
・中長期ハト派:中小企業の懸念が示され、大幅利上げは想定されない
・超長期タカ派:米国の利下げが進んでも、日銀の利上げ路線は継続へ
・あと1、2回の利上げは急いで、比較的早い段階で利上げ停止か

タカ派とハト派の意見が入り混じる内容で「短期タカ派、中長期ハト派、超長期タカ派」

日銀が公表した「金融政策決定会合における主な意見(10月30-31日開催分)」(以下、「主な意見」)は、①「時間的余裕」という言葉で情報発信をしていく局面ではなくなりつつあるとされたこと(タカ派的)、②米大統領選挙後の状況を含め、今後の展開を見るとされたこと(中立的)、③中小企業は業績が厳しいとされたこと(ハト派的)、④日米に大幅な金融緩和が求められる局面ではないとされたこと(タカ派的)などが特徴的だった。全体としてはタカ派とハト派の双方の側面があったものの、時系列で分けると分かりやすい。すなわち、日銀は短期タカ派、中長期ハト派、超長期タカ派と評価できる。以下では、実際の意見を参照して上記を確認する。

短期タカ派:「時間的余裕」は不要で、12月利上げの可能性

今回の「主な意見」では、「米国経済の不透明感が低下する中で、『時間的余裕』という言葉で情報発信をしていく局面ではなくなりつつある。引き続き様々な不確実性に留意すべき状況ではあるが、今後は、毎回の会合で、その時点のデータに基づき、リスクや見通しの確度を点検していくことを伝えていくことが重要である」とされた。これは植田総裁の記者会見と同様の内容で、タカ派的である。これとは別に「今後の日米の財政政策の展開とそのもとでの為替相場の動向について、物価への影響を懸念している」というコメントがあったが、米大統領選後は円安が進んだ一方、市場全体としては混乱はしていない。12月に日銀が利上げを決める可能性が高いと、筆者は予想している。

中長期ハト派:中小企業の懸念が示され、大幅利上げは想定されない

中長期的には中小企業の動向を不安視する意見が印象的だった。具体的には「支店長会議では、中小企業は業績が厳しい中で人材係留目的の防衛的賃上げを行っているとの声も多く聞かれ、賃上げの持続性には懸念がある」「人手不足による労働供給の制約から、収益性の低い事業分野からの撤退に伴う企業の事業縮小などを通じて、わが国経済の成長を減速させるリスクがある」という意見があった。また、「中小企業の経営者からは、円安の修正を歓迎し、『経営に影響が大きいのは金利よりも為替だ』とする声がかなり聞かれる」とされ、中小企業への影響を考えて金融政策を考えるという視点もあった。この議論を考慮すると、日銀は緩やかな利上げによって企業に新陳代謝を促したいという意向はあったとしても、大幅な利上げによって中小企業に過度なプレッシャーをかけるつもりもないのだろう。当面は円安のデメリットを考慮して利上げを急いだとしても、中長期的にはハト派化していく公算が大きい。