「オントラック」と言えなくなるのは25年7月の展望レポートか

経済・物価の見通しについては7月以降に円高が進んだものの、物価見通しは維持される見込みである。Bloombergは「関係者によると、今月の会合で議論される経済・物価情勢の展望(展望リポート)は、消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)が見通し期間の2026年度にかけて2%程度で推移するとの従来予想から大きな変化はない見込み」だと報じた。Bloombergは「前回7月に『上振れリスクの方が大きい』とした24年度と25年度の見通しは、円安修正を背景にリスクに関する表現の修正が議論になる可能性がある」としたが、これは利上げサイクルの停止に直結する変更ではないだろう。

なお、実質GDP成長率の見通しについてはBloombergは触れていなかった。7月の展望レポートでは、24年度の成長率見通しが前年度比+0.6%、25年度が同+1.0%、26年度が同+1.0%となっていた。最新の民間エコノミスト予想(10月ESP調査)では24年度が同+0.55%、25年度が同+1.05%、26年度が同+0.88%と、日銀の見通しと同程度であることもあり、10月の展望レポートでも修正はほとんどないだろう。

日銀が見通し修正については、足元の円高の影響が消費者物価に反映された後の25年7月の展望レポートが有力だと、筆者はみている。24年12月と25年4月に利上げを行った後、25年7月には「オントラック」という主張が難しくなり、利上げが停止される可能性が高いだろう。

(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)