10月利上げはスキップされる見込みだが、重要なのは「オントラック」の維持
Bloombergは10月18日、「日銀は今月利上げの必要性乏しいとの認識、今後は排除せず-関係者」との記事を配信し、「日本銀行は、海外経済や金融市場の先行きが不透明な中で、今月の金融政策決定会合で追加利上げを急ぐ必要性は乏しいとの認識を強めている」と報じた。植田総裁が9月決定会合後の記者会見で利上げの判断について「時間的な余裕はある」(日銀会見録)と述べたこともあり、市場では10月30-31日の決定会合で利上げが行われるという見方は少ないため、当該記事の内容はサプライズではない。しかし、10月決定会合では展望レポートが公表されるため、利上げをスキップする場合はこれまで植田総裁が述べてきた「オントラックなら利上げ継続」という考え方との整合性については日銀から説明があるだろう。この説明の内容を踏まえて次回の利上げのタイミングを探ることになる。
「オントラック」であれば、25年1月展望レポートを待つ必要なし(12月利上げが有力)
例えば、①経済・物価見通しが下振れた、ということであれば再利上げはデータが改善しなければ封印されることになるだろう。また、②経済・物価見通しを見極めたい、ということであれば次回の展望レポート(25年1月)の公表時が再利上げのタイミングとして有力になる。他方、③経済・物価見通しはオントラックなのだが海外経済や市場の落ち着きを見極めたい、ということであれば25年1月展望レポートを待つ必要はなくなるため24年12月会合が再利上げのタイミングとして意識される。
Bloombergによると、「2%物価目標の実現に不可欠な賃上げは、高水準だった今年の春闘の結果がデータなどに反映されてきており、個人消費も底堅い動きとなっている。物価面では従来の円安進行などに伴うコストプッシュ圧力が和らぐ一方、サービスを中心に賃金を価格に転嫁する動きが広がりつつある。足元までの経済・物価はオントラック(順調)との認識が日銀内でほぼ共有されている」という。一方で、「関係者によると、引き続き米中を中心とした海外経済の先行き不透明感は強いと日銀は認識しており、金融市場は8月の急変時と比べて落ち着いてきているものの、なお不安定な状況とみている。こうした不確実性がいつ解消するかを予測するのは難しく、会合ごとに検証する必要がある」とされた。
これらを考慮すると、10月決定会合では③経済・物価見通しはオントラックなのだが海外経済や市場の落ち着きを見極めたい、という説明で利上げをスキップするのだろう。「オントラックなら利上げ継続」との整合性については説明が必要だが、「金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはありません」(8月7日の内田副総裁講演)という説明で問題はないだろう。むろん、本音としては10月27日の衆院選直後で11月5日の米大統領選を控える中、利上げをスキップすべきという判断が想定される。
もっとも、「オントラック」という見通しは維持されるのであれば、再利上げのタイミングとして25年1月展望レポートを待つ必要はなくなる。今後は、24年12月会合が再利上げのタイミングとして意識される。Bloombergも「オントラックとの判断は追加利上げの根拠になり得る。今後は12月に追加利上げがあるかどうかが焦点となる」と分析したが、当該記事の内容を受け、筆者も24年12月の再利上げが有力だと考えた。
なお、Bloombergは「今回会合までまだ2週間近くあるため、日銀は展望リポートや金融政策について最終的な結論には至っていないと関係者は付け加えた」と報じたが、これは決定会合は毎回ライブである、という決まり文句に過ぎないだろう。今後2週間で大幅に円安が進むようなことがなければ、日銀がサプライズを批判されるリスクをとってまで急遽利上げに動く可能性は低い。