(ブルームバーグ):1日の日本市場では株式が大幅続落し、日経平均株価は1000円を超す下げとなった。日本銀行の植田和男総裁の発言がタカ派的と受け止められ、早期の追加利上げ観測の再燃で為替市場で円高が進み、業績に悪影響が及ぶと警戒された。債券は下落し、40年国債利回りは前日に続き16年ぶりの高水準を付けた。円は対ドルで151円台後半まで上昇した後、反落した。
植田総裁は10月31日の金融政策決定会合後の会見で、これまで繰り返してきた政策判断に「時間的な余裕はある」との表現を今後は使わず、経済・物価情勢を踏まえ予断を持たずに判断していく姿勢を強調した。市場では、次回12月会合での利上げの可能性がゼロではなくなったとの受け止めが広がった。
元日銀調査統計局長のゴールドマン・サックス証券の大谷聡氏は、日銀は次回利上げに向けた地ならしを開始したと指摘。1ドル=160円程度まで円安が進行した場合、12月に利上げが決定されると予想した。
また、米国では連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に影響を与え得る雇用統計の発表を日本時間今夜に控え、来週には大統領選挙もある。さらに東京市場は3連休に入るため、各マーケットでは売り買い双方のポジション調整の動きも出やすかった。
株式
東京株式相場は大幅続落。日銀総裁の発言を受けて一時円高が進んだことで、輸出や素材セクターを中心に業績への悪影響を懸念する売りが幅広い業種に広がった。米大統領選に対する警戒感も相場全体の重し。
TOPIX採用の2128銘柄中、下落は1697、上昇は376。東証33業種は非鉄金属や化学、電機、輸送用機器、機械など32業種が下落、上昇はガラス・土石製品の1業種。売買代金上位では東京エレクトロンや三菱重工業、日立製作所が下げ、四半期決算が市場予想を下回ったレーザーテックは急落した。決算が予想を上回った三菱電機、パナソニックホールディングスは逆行高。
T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは、日銀のスタンスが変化したことで円高が進み、市場に下押し圧力がかかったと指摘。岡三証券の山本信一シニアストラテジストは、米国の大型ハイテク企業の期待外れの業績見通しや来週の米大統領選の結果に対する不透明感も日本株の下落要因と話していた。
債券
債券相場は下落。日銀総裁の発言を受け、早期の利上げ観測の高まりから売りが優勢となった。
東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは植田総裁の前日の会見について、12月は予算編成があって利上げはやりにくいが、情勢が変わらなければ「1月には必ずやりたいという意思表示で、日銀は退路を断った」との見方を示した。
新発40年債利回りは前日に続き2008年以来の水準である2.555%に上昇。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは、中長期債は金利が上がると押し目買いが入り下げ渋ったが、超長期債は財政拡大への懸念からか買い手不在が続いていると言う。
新発国債利回り(午後3時時点)
外国為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=152円台半ばに小幅反落。日銀総裁の発言を受けた早期利上げ観測で買いが先行した後、売りに転じた。米国の雇用統計や大統領選を前にした持ち高調整の動きとの指摘が聞かれた。
関西みらい銀行の石田武ストラテジストは電話取材で、前日の日銀総裁の発言が想定以上にタカ派だったことから円買いが先行したものの、米国の重要イベントを前に「ポジション調整で前日からの円買いが揺り戻された」と話した。
加えて、日本が3連休となることや米大統領選で値動きが荒くなることを想定し、先回り的にドルを確保する動きもあったとみている。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:横山桃花.
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