野村ホールディングス(HD)は31日、傘下の野村証券による国債の相場操縦(金融商品取引法違反)問題を受け、同証の奥田健太郎社長ら8人が役員報酬の一部を自主返上すると発表した。

関係者によると、相場操縦を行ったトレーダーはすでに野村証を退社した。発表資料によると、野村証はこのトレーダーやその管理者について、社内規定に基づき厳正に処分を行ったとしている。

野村証役員のうち、HDの社長を兼任する奥田氏と中島豊副社長ら5人が月額報酬の20%を2カ月間、現グローバル・マーケッツジャパン・ヘッドの平岡徹也常務ら3人が同10%を2カ月間返上する。相場操縦が起きた当時、証券社長を務めていた日本証券業協会の森田敏夫会長も5人の中に含まれる。

証券取引等監視委員会は9月、野村証のトレーダーが国債の先物取引で相場操縦したとして、同証に2176万円の課徴金納付を命じるよう金融庁に勧告。同庁は10月31日、同額の納付命令を行ったと発表し、野村証はすでに納付した。

金融庁の納付命令を受けて、野村証は改めて陳謝した上で「法令順守体制および内部管理体制のより一層の強化・充実を図り、再発防止と信頼回復に努めていく」とのコメントを発表した。

再発防止策についても発表した。国債先物を扱うトレーダー全員に対して改めて不公正取引に関する研修を実施したといい、今後も継続して行っていく。国債先物の個々の発注・取り消しについてのモニタリングも開始し、売買管理体制を強化した。

新たに「グローバル・マーケッツ・サーベイランス企画部」を設立し、再発防止に向けた取り組みの実施状況の確認や客観的な視点での実効性の検証も行うとしている。

課徴金額は野村HDの事業規模と比較して少額だが、日本銀行が3月にマイナス金利を解除し、「金利ある世界」でトレーディング収益などの拡大が期待される中で、同社のビジネスの足かせとなる可能性がある。

財務省は10月11日、野村証が持つ国債市場特別参加者(プライマリーディーラー)に関する資格を一時停止すると発表。少なくとも国内大手機関投資家10社が、同証との間で債券・株式など有価証券の取引を原則停止したことが明らかになっている。

監視委の発表によると、野村証のトレーダーは2021年3月、大阪取引所上場の長期国債先物取引で、安値で買い取ることを目的に大量の売り注文を出し相場を変動させて第三者の売り注文を誘発し、自らが買い取った後に先に出した売り注文を全て取り消すなどした。

(トレーダーの退社など内容を追加し、記事を更新します)

--取材協力:谷口崇子、沢和世.

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