(ブルームバーグ):損害保険会社が企業向け共同保険などで事前に価格を調整していた問題で、公正取引委員会は31日、独占禁止法(不当な取引制限)に違反する行為をしていたとして、大手4社に総額20億円超の課徴金納付命令を出したと発表した。再発防止を求める排除措置命令も出した。
東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険に9件、あいおいニッセイ同和損害保険には4件の違反がそれぞれあったと認定した。課徴金の内訳は、三井住友海上が8億8514万円、損保ジャパンは6億4798万円、あいおい5億640万円、東京海上3212万円。各社とも違反内容の自主的な報告で課徴金が減免となる制度を申請。東京海上は4件で全額免除された。

同日午前、損保4社の社長らが公取委を訪れ、命令を受けた。公取委の大胡勝・審査局長は「今後このようなことがないよう再発防止を万全に行い、対応されるよう強く求める」と申し渡した。
また、午後に開いた記者向け説明会では「日本を代表するような大手損保4社がこのような多岐にわたる事案について多くの違反行為をしており、それぞれの会社単位での体質も問われる」と指摘。違反行為が再度起きた場合には「さらなる厳しい対応もあり得る」と語った。
保険料の価格調整問題を巡っては、2023年12月に金融庁が損保4社に対して業務改善命令を出した。公取委が違反認定したのは9件だが、金融庁によると独禁法の観点から不適切な行為は500を超える企業との契約で行われていた。
今回の問題を機に損保各社は、適正な競争をゆがめたとされる企業との株式持ち合いを全て解消する方針や再発防止策を打ち出したが、こうした不透明な慣行を繰り返さないための取り組みの徹底が求められる。
損保4社は同日、謝罪とともに再発防止策の徹底を図り、信頼回復に努めるなどとするコメントをそれぞれ発表した。
公取委が違反を認定した9件は、JERAやコスモ石油、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、シャープ、京成電鉄、仙台空港、東急のそれぞれの共同保険に加え、警視庁と東京都の単独保険。あいおいはそのうちJERAとコスモ石油、京成電鉄に関与していた。

公取委第五審査長の池田卓郎氏は、大口顧客の多くを対象に違反行為が行われていたとして「企業の経済活動に大きく影響を与え、ひいては国民生活への影響も大きい重大な事案」と指摘。長期間にわたって違反行為が行われていた上、共同保険では競争関係にある企業同士が情報交換しやすい環境にあり「再発の可能性が高い」と説明した。
大手損保の営業担当者は自社の利益を確保するため、電話やメールのほかオンラインや対面での会合を通じて情報交換を行い、見積もり合わせや入札において各社が提示する保険料や引き受け期間を調整していたという。こうした事前調整の内容は、複数社かつ複数の事案で部長などの上層部に対して報告されていた。
公取委は、違反行為が長期間行われていたことなどを受け、金融庁と日本損害保険協会に対し、損保各社に法令順守を周知徹底するよう要請した。
(公取委審査局長と損保各社のコメントを追加して記事を更新します)
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