(ブルームバーグ):ブロックチェーンベースの予測市場「ポリマーケット」の信頼性に懐疑的な見方が広がっているにもかかわらず、米大統領選挙で共和党候補のトランプ前大統領が勝利する可能性が高いことを示している同サイト上の賭けにウォール街は注目している。
大口の賭けや仮想通貨支持派への偏りが同サイトに表示される確率をゆがめる可能性があるとの批判がある一方、一部のトレーダーやストラテジストはポリマーケットを非常に注視している。
最近の世論調査によると、11月5日の投票日を控え民主党候補のハリス副大統領とトランプ氏は基本的に接戦となっているが、ポリマーケットではトランプ氏が勝利する確率が67%となっている。
トゥルーイスト・ウェルスの共同最高投資責任者(CIO)、キース・ラーナー氏はアトランタで「あまりに接戦のため、人々は優位に立てるものなら何でもつかもうとしている」と述べた。
米銀大手JPモルガン・チェースもポリマーケットを活用している。同サイトの確率を利用して、選挙結果に応じて上昇または下落すると予想される株式銘柄のロング・ショートバスケットを構築している。
同行のトレーディングデスクはメモで、選挙結果によってどのテーマが最も影響を受けるかについて主観的な見解を押しつけるのではなく、ポリマーケットの確率に連動する動きを分析するモデルを使用していると明かした。JPモルガンの広報担当者はコメントを控えた。
バーンスタインとスタンダードチャータードのデジタル資産アナリストも、最近の調査メモでポリマーケットの確率を引用している。
アンティモのシニアポートフォリオマネジャー、フランク・モンカム氏は「何かしらによってセンチメントひいては見解を固める必要がある。ポリマーケットはその代替でありベンチマークだ」と指摘。「ウォール街はそれに関するゲームプランを立てている」と話した。

ただ、同サイトに反映される確率には多くの注意点がある。例えば、理論的には少数の大口投資家が市場を動かし、選挙の確率をゆがめる可能性がある。ポリマーケットは先週、トランプ氏の勝利に4500万ドル(約69億円)余りを賭けた人物が金融業のバックグラウンドがあるフランス人だと分かったと明かした。
カイコ・リサーチの暗号資産アナリストは、ポリマーケットは米国で利用できないため、同サイトの確率は米国の有権者の意向が反映されていないと指摘する。
また米大統領選の結果に対する賭けは、現在ニューヨークを拠点とするポリマーケットで最も人気のあるサービスで、主要市場での取引高は27億ドルに上るが、データプラットフォームのデューンの分析によると、建玉は3億3000万ドル程度にとどまっている。
カイコのアナリストは、建玉が2億5000万ドル未満だった10月24日のメモで「市場の流動性が極めて低く、選挙結果の予測価値はほとんどない」と指摘。「世論調査があまりにも接戦で、ブロックチェーンベースの予測市場はまだ発展途上であるため、他の市場を考慮することが重要だ」と語った。
一方、ポリマーケット支持派は、現金が賭けられていることを考慮すると、世論調査よりも真実の視点を提供していると主張する。
バーンスタインのゴータム・チュガニ氏が率いるアナリストチームは29日付のメモで、ポリマーケットではトランプ氏の支持者によるバイアスよりも市場原理が働いていると考えていると指摘。少数の大口投資家が市場を特定の方向に動かすことができることを認めながらも、反対派は賭けをしている人々が「自らリスクを背負っている」ことを見逃していると反論した。
いずれにせよ、ポリマーケットに注目が集まっていることは従来の世論調査に対する信頼が失われていることを浮き彫りにしている。最近の選挙では幾つかの世論調査の予想が覆される事態となった。2024年の世論調査ではハリス氏とトランプ氏の接戦が示されているが、専門家は近年の調査への参加率低下を理由にデータの正確性に疑問を呈している。
原題:Polymarket Influence on Wall Street Grows Despite Red Flags (2)(抜粋)
--取材協力:Emily Nicolle、Olga Kharif.
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