デンソーは31日、4500億円を上限に自己株式を取得すると明らかにした。発表を受け、株価は急騰した。同社を含むトヨタ自動車のグループ会社間や金融機関などとの株式持ち合いが進んでおり、大型の自社株買いが受け皿となる。

今回の自社株買いは自己株式を除く発行済み株式総数に対する割合は9.62%で、取得期間は11月1日から2025年10月27日。また、7.64%を11月29日付で消却することも同日発表した。発表を受け、前日比横ばいの水準で前後していた株価は急騰。一時同5.8%高の2330円と約3カ月ぶりの日中高値を付けた。

2021年度に刷新した財務戦略のもとでデンソーは資本コストを意識した経営にかじを切り、積極的な株主還元を通じて効率性と安全性のバランスが取れた資本構成を目指している。 自己株取得については株主資本比率が60%を超えないよう、理論株価との比較を通じて機動的に実施することを基本方針としていると説明。前期(2024年3月期)までの3期の間に累計約4000億円の自己株取得を実施してきたという。

その上で、今回の取得規模については国内企業で政策保有株縮減の動きが加速する中、同社も株主の一部金融機関からデンソー株売却の意向を聞いているとし、今後の同社株に関する需給懸念に対応する狙いがあるとした。また、将来的に特定の大株主による大規模な株式売却の意向がある場合には追加の自社株買いを行い対応することも検討していくという。

デンソーの決算発表後、豊田自動織機が保有する全てのデンソー株を売却すると発表した。約1億8490万株を12月から27年3月までの期間で売却するという。30日の終値を基に算出すると、売却額は約4071億円になる。

国内企業の間では取引先の企業や金融機関などと株式を持ち合う慣習が長年続けられてきたが、近年は資本効率改善の観点などから解消に向けた取り組みが急速に進んでいる。トヨタ自動車も7月、設定していた1兆円を上限とする自社株買いの枠を活用し、金融機関が持つ政策保有株の取得をすると発表した。デンソーも2-3年で政策保有株を限りなくゼロにする方針を示している。

デンソーの松井靖副社長は31日の記者会見で、今回の自社株買いについて足元の自社の株価が「極めて安い」と評価していることや政策保有株の売却に伴いキャッシュが積み上がっていることも背景にあると説明した。持ち合い解消に伴いデンソー株を保有する企業も今後売却を進めるとみられることから、「そういう下押し要因も加味した上で、今回できるところの最大でやろうという考え方が4500億円だ」と続けた。

(発表の詳細や背景情報を追加して更新します)

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