メジャーリーグベースボール(MLB)の覇者を決めるワールドシリーズで、大谷翔平選手が出場している試合を日本の人口の約12%が観戦しているが、東京のトレーダーらはモバイルやテレビで試合を見ることがかなわず、蚊帳の外だ。

ドイツ銀行の社員によると、麻布台ヒルズ(東京都港区)16階にあるトレーディングフロアのテレビは経済ニュースチャンネルに固定され、ディーリングルームでは個人の携帯電話が使用できず、リアルタイムで試合を観戦する方法はほぼないという。

トレーダーが未承認の取引を行ったり、情報を漏らしたりすることを防ぐためコンプライアンスの観点からこうした環境になっている。三菱UFJ信託銀行や、ブルームバーグが取材した国内および外資系金融機関2社でもほぼ同じ規定だった。MLBなどが発表した統計ではロサンゼルス・ドジャースとニューヨーク・ヤンキースのシリーズ第2戦は日本全国で約1590万人が視聴したが、ディーラーらは両軍の対決を生中継で見ることができなかった。

三菱UFJ信託の資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長は、「高校、大学とやっていたので野球が好きだ。ワールドシリーズを見たかったが、残念だ」と話した。一方、日中は忙しく「ドル・円が衆議院選挙の結果を受け円安方向に推移し、マーケットの動向が気になる」ため、野球観戦どころではない様子だ。

三菱UFJ信託のトレーディングフロアの様子(3月)

トレーダーの中には、金融情報端末で流れてくる試合の最新情報をチェックしている人もいるが、業務が終了するまで試合を見ないようにしている人が大勢だ。

関西大学の宮本勝浩名誉教授の推定では、大谷選手の2024年の経済効果は約1168億円で、同選手が広告に出た企業の商品やサービスが購入される「社会現象」が起きているという。

三菱UFJ信託ではデスクトップのパソコンでユーチューブを見ることもできない。酒井トレーダーは「帰宅後、夜のスポーツニュースで試合を見るのを楽しみしている」と語った。

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