(ブルームバーグ):東芝の子会社、東芝デバイス&ストレージの栗原紀泰常務は、パワー半導体の世界市場における同社のシェアについて、2030年くらいに「2桁は絶対必要」になるとの考えを示した。
栗原氏は16日のインタビューで、2桁シェアを持たなければ独インフィニオンテクノロジーズを頂点とする海外勢と戦っていけないと危機感を口にした。他社と連携することで自社の足りない技術を補完し、シェア拡大につなげられることから、「アライアンスは避けられないのではないか」との見方も示した。
昨年末に非上場化した東芝にとって半導体事業は強化分野の一つで、26年度までの3年間に約1000億円投資する。石川県内の新しい製造棟は本格稼働に向けた準備が進み、フル稼働時にはパワー半導体の生産能力を21年度比2.5倍に高める計画だ。兵庫県やタイの工場の能力も増強する。
連携候補への言及は避けたが、同じくパワー半導体を生産するロームとはそれぞれが新たに整備する工場で製品を融通し合う計画で、経済産業省は両社に最大1294億円支援する。ロームの松本功社長は5月時点で、東芝との半導体事業の業務提携に向けた協議を開始する方針を明らかにしていた。
高いハードル
電気自動車(EV)や家電に使われるパワー半導体は主に電力の制御や供給を担い、効率的に電力を扱うことで省エネにも貢献するため需要が高い。東芝は売価の見直しや固定費の削減を通じて収益構造を見直し、シェア拡大を図る計画だ。
英調査会社オムディアによると、パワー半導体市場における日本勢のシェアは低い。トップはインフィニオンの22.8%で、米オン・セミコンダクター(11.2%)やスイスのSTマイクロエレクトロニクス(9.9%)と続くが、国内メーカーは三菱電機の5.5%、東芝やロームは3.2%にとどまる。

経産省も半導体業界の現状をまとめた昨年11月の資料の中で、半導体・デジタル産業基盤の整備・確保が不可欠だと説いた上で、パワー半導体の分野については国内勢がシェアを分け合う状況であることから、メーカー間の連携や再編が期待されるとした。
英調査会社オムディアの南川明シニアコンサルティングディレクターは、パワー半導体市場は既存の海外勢に加え、中国勢もかなり大規模な投資をしていることから、5年後にはトップ10に入ってくると予想する。
南川氏は、今のままだと東芝に打つ手は少なく、同社が望む規模でのシェア拡大はハードルが高いとした上で、「再編の枠組みを日本だけに限定するのではなくて、むしろ海外勢と検討するべき」だと話した。
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2024 Bloomberg L.P.