(ブルームバーグ):米大統領選挙は「スイングステート」と呼ばれる一握りの激戦州でわずか数千人の票差で勝敗が決まる可能性が高い。
開票を待たなくても大部分の州では、民主党候補のハリス副大統領と共和党候補のトランプ前大統領のどちらが州の選挙人を獲得するかほぼ疑う余地がない状況だ。そのためハリス候補とトランプ候補は、時間と資金の大部分を本当に接戦の少数の州に費やしている。
スイングステートとは何か?
激戦州とはミシガン州やペンシルベニア州、ウィスコンシン州など、民主、共和両党の支持率が拮抗(きっこう)し、近年の大統領選の勝者が両党間で揺れた州を指す政治的呼称だ。
米国の有権者がますます二極化する中で、選挙人獲得の行方に不透明感が残る激戦州は、わずか数州に減少した。トランプ氏がマサチューセッツ州を制する可能性や、ハリス氏がオクラホマ州で勝利することはあり得ない。
例えば、民主党はマサチューセッツ州で11人、共和党はオクラホマ州で7人の選挙人が得られると期待できる。そこで両党は、大統領選の勝利に必要な選挙人270人の獲得を目指し、激戦州で争うことになる。
激戦州は幾つあるか
正確なリストは選挙ごとに変わり得るが、政治アナリストは今年、総じて七つの重要な激戦州を挙げる。アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ノースカロライナ、ペンシルベニア、ウィスコンシンの7州だ。
これらは2020年大統領選でトランプ氏とバイデン大統領が接戦だった州であり、激戦の歴史がある。16年にはトランプ氏がミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンの3州で合計7万7744票を獲得して競り勝ったが、20年にはバイデン氏が3州全てで勝利した。
アリゾナ州とジョージア州では、20年がバイデン氏、16年はトランプ氏がそれぞれ勝利。ネバダ州は16年と20年の両方で民主党候補、ノースカロライナ州はいずれもトランプ氏が僅差で制した。
激戦州に共通点はあるか
激戦州は概して経済的にも文化的にも多様であり、米国全体の縮図のようなケースもある。
例えばペンシルベニア州は19人の選挙人を擁し、恐らく最も勝利が切望される激戦州だ。両陣営とも勝利への重要な鍵を握る州と見なしている。
フィラデルフィアやピッツバーグを含む都市部と農村部が混在するペンシルベニア州の経済は多様で、人口動態は米国全体と似ている。黒人の人口比率は10.5%と、全米の12.3%よりわずかに低く、1人当たりの所得は4万1234ドル(現在の為替レートで約626万円)と、全米の4万1261ドルに非常に近い。
激戦州の数は変わるのか
数十年前は今の倍の激戦州が存在したが、二極化が進行し数が減少した。
2000年以降、選挙ごとに勝利する政党が入れ替わった州は15に上る。しかし、今年は現実的には7州のみ接戦となっており、実際の選挙では2、3州に絞られる可能性がある。それらの州の中でも、共和党と民主党の色分けが進んでおり「レッドカウンティ(赤い郡)」はより赤く、「ブルーカウンティ(青い郡)」はより青くなり、真に拮抗する場所はごくわずかだ。より少数の有権者、そして彼らが気に掛ける経済問題が、選挙戦に大きく影響する状況をそれは意味している。
オハイオ州はかつて典型的な激戦州だった。同州を制した候補は、1964年から2016年までの全ての大統領選で当選した。だが郡部やワーキングクラスの有権者からの強力な支持を背景に最近数年は共和党が確実に優勢となっている。
両陣営はより拮抗したと思われる州や、人口動態が変化したと見られる州に狙いを定めることもある。ミネソタ州では1972年のリチャード・ニクソン氏以降、共和党の大統領候補が勝利したことはない。トランプ氏は2016年に2ポイント未満の僅差で敗れた同州で選挙キャンペーンを行ってきたが、ハリス氏がウォルズ同州知事を伴走者に選んだことで、それほど接戦ではなくなったと民主党陣営は考えている。
激戦州はどのような選挙情勢か
10月23日に公表されたブルームバーグ・ニュース/モーニング・コンサルトの世論調査結果では、両候補がデッドヒートを繰り広げる選挙情勢が示された。ハリス氏への支持は7月下旬にバイデン氏に代わり民主党の大統領候補指名を確実にした直後に急上昇したが、その後勢いを失った。
激戦州の有権者は一貫して経済を最も重要な争点と位置付けている。約50%が米経済の運営でトランプ氏の方がハリス氏より信頼できると答え、ハリス氏との回答は45%にとどまった。一方、ハリス氏が選挙遊説で力を入れる住宅と医療費などの問題では同氏がリードしている。
原題:A Brief History of Swing States in Presidential Races: QuickTake(抜粋)
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