18日の日本市場では円相場が上昇。前日の海外市場で一時1ドル=150円台前半と約2カ月半ぶりの安値を付けたため、日本の通貨当局による介入警戒感が広がったほか、国内企業の円買いも入った。

三村淳財務官がこの日、足元の為替動向はやや一方的との認識を示し、高い緊張感を持って注視すると発言した。米国で17日に発表された9月の小売売上高は市場予想を上回る伸びとなり、米連邦公開市場委員会(FOMC)による年内の利下げ観測が後退。円は一時150円32銭と8月1日以来の安値を付けていた。

三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチの井野鉄兵チーフアナリストは三村財務官の発言について、米国の良好なファンダメンタルズを背景に「ドルが一段高となる可能性が意識される状況のため、150円を超えた円の下落が加速するリスクにくぎを刺したということだろう」と指摘。心理的節目を超え、輸入物価の上昇が世論を刺激する可能性も背景にあるとの見方を示した。

債券相場は下落。米金利上昇の流れが波及した上、最近の円安で日本銀行の追加利上げが意識され、10年債利回りは一時約2カ月半ぶりの高水準となった。株式は反発した。

為替

東京外国為替市場の円相場は1ドル=149円台後半に上昇。三村財務官の発言を受けて買いが優勢となった。前日の海外市場で8月1日以来の円安水準を付けたため、国内輸出企業の為替リスクヘッジや投資家の利益確定を目的とした買いも入りやすかった。

りそなホールディングス市場企画部の井口慶一シニアストラテジストは、短期的には「多くの企業にとって150円台は円買いニーズがあるのではないか」と話し、国内輸出企業の円買いも下支え要因とみていた。

一方、米経済のファンダメンタルズの強さからドルを売りづらい環境だとも井口氏は指摘。200日移動平均線が位置する151円台前半や152円前後のチャートポイントを意識した動きが続きやすいと語った。

 

債券

債券相場は下落。長期金利は一時約2カ月半ぶりの高水準を付けた。米国で長期金利が上昇した上、円安が日銀の追加利上げを後押しするとの見方が相場の重しとなった。一方、日銀の国債買い入れオペが実施される中、中長期債は取引終了にかけて下げ幅を縮小した。

岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、米経済の軟着陸シナリオで利下げペースが遅くなるとの見方から円安が進んだとして、「米景気の強さが日銀の利上げをしやすくする」と指摘した。

SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジストも、150円を超えて円安がさらに進めば、日銀が再び円安対応の利上げに踏み切るとの思惑が生じやすいとみる。一方、超長期債については、利上げの直接的な影響が限られる上、日銀が買い入れオペの減額を見送っているため、「海外金利が上昇した割にはしっかりしている」と述べた。

日銀は午前の金融調節で定例の国債買い入れオペを通知した。対象は残存期間1年超3年以下、3年超5年以下、5年超10年以下、25年超。買い入れ額はそれぞれ3250億円、3250億円、3750億円、750億円。オペの結果は、25年超を除く年限で応札倍率が前回から低下した。

新発国債利回り(午後3時時点)

 

株式

株式相場は反発。決算を受けてテクノロジー株が買われた。金利上昇で銀行株の上げも目立った。一方、為替の円安一服は重しとなり、相場は下げに転じる場面もあった。

ピクテ・ジャパンの田中純平ストラテジストは銀行株の上昇が日本株をある程度けん引したと指摘。「再び日本の10年国債利回りが上昇基調となっているので、それが材料視されている」と述べていた。

半導体切断・研磨装置のディスコが急伸し、日経平均構成銘柄で最大の上昇率となった。17日に発表した第2四半期の営業利益がアナリスト予想を上回った。台湾積体電路製造(TSMC)が同日の決算発表で強気の見通しを示したことで、半導体や精密機器株の一部が上昇した。

TOPIX構成銘柄では2127銘柄のうち1090銘柄が下落、上昇は902銘柄だった。東証の33業種は石油・石炭製品を筆頭に22業種が下落した。

 
--取材協力:横山桃花.

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