(ブルームバーグ):22日の日本市場では株式が反発し、日経平均株価は7月31日以来の高値を付けた。米国の利下げ観測が強まり、世界景気を下支えしていくとの見方から投資家のリスク選好度が高まった。ただ、あすの日米中央銀行トップの発言を前に様子見ムードが強く、前日終値を下回る場面もあった。債券や為替も方向感を欠いた。
前日の米国では連邦公開市場委員会(FOMC)が7月30、31日に開いた会合の議事要旨を公表、幾人かの当局者が利下げの妥当な論拠があるとの認識を示した。また、労働統計局によると、3月までの1年間の雇用者数は81万8000人下方修正される見通しとなった。これらを受け9月の利下げが確実視され、株式が反発。債券は短めの年限を中心に利回りが低下し、為替は1ドル=144円台半ばまで円高が進んだ。
23日には日本銀行の植田和男総裁が衆参両院の閉会中審査に出席し、米国ではパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長がカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム(ジャクソンホール会合)で講演する。日銀が7月に追加利上げに踏み切った際、植田総裁はさらなる利上げに前向きな姿勢を示したが、その後金融市場が混乱したため、発言が注目されている。
りそなホールディングス市場企画部の井口慶一シニアストラテジストはパウエル議長の講演について、FOMC議事要旨がかなりハト派な印象だったのでややハト派になると予想する。ただ、年4回の利下げ織り込みは行き過ぎだとし、その調整から為替市場では「講演前後にドル売りに歯止めがかかる」とみている。
市場の視線を一身に浴びる植田日銀総裁、衆参両院であす閉会中審査
注目のパウエル議長講演、インフレ抑制から利下げに向けた転換点に
株式
東京株式相場は反発。米国で9月の利下げが確実視されてリスク選好の動きが広がった。
TOPIXを構成する2132銘柄のうち1295銘柄が上昇、716銘柄が下落。信越化学工業が最も指数を押し上げた。医薬品や食料品、小売りといった内需関連株が高い。一方、為替の円高基調を受け業績上乗せ期待が後退する自動車や機械など輸出関連株は下落。銀行や証券といった金融株も安い。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、急落からの戻りペースが速く、短期的には利益確定売りが出やすいと指摘。植田日銀総裁の閉会中審査はサプライズがないという前提で株価の材料にはなりにくいとした上で、タカ派的な発言があれば売りが出るだろうと述べた。

為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=145円台前半で推移。9月の米利下げ観測が強まり、ドル安・円高が進んだ後は売り買いが交錯した。国内株価の堅調な値動きも円買いが一服した一因。
植田日銀総裁の閉会中審査について、三井住友信託銀行米州部マーケットビジネスユニットの山本威調査役は、7月の金融政策決定会合後の会見よりハト派な内容が予想されると述べた。パウエルFRB議長は9月の0.5ポイント利下げを示唆するほど踏み込まず、円買い・ドル売りは一服する可能性もあるとみる。
もっとも、「本格的にドルが戻るかは9月6日に発表される雇用統計などデータ次第の面もあり、ドルの上値は重そうだ」と言う。

債券
債券相場は中長期債と先物が下落。植田日銀総裁の閉会中審査を控えて投資家の姿勢が慎重で、売りが優勢だ。流動性供給入札がやや弱めの結果になったことも相場の重しになった。一方、利下げ観測の高まりを受けて米金利が低下する中、超長期債は買われた。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは、植田総裁は市場の変動を高めるような発言は避けるとみており、「市場は発言内容を見極める姿勢から動きにくくなっている」と話す。流動性供給入札については「無難からやや弱めの結果で、7年ゾーンの需給逼迫(ひっぱく)を考えると、もっと応札が集まっても良かった」との見方を示した。
残存期間5年超15.5年以下の流動性供給入札は、応札倍率が3.05倍と前回7月16日の同年限の入札から低下した。発行額は前回から500億円増額の6500億円程度。
新発国債利回り(午後3時時点)

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