メキシコが2年ぶりにサムライ債を発行し、日本銀行の利上げ後も利回りが比較的低い円債市場で資金調達することを計画している。

事情に詳しい関係者によると、メキシコは3年から20年までの6年限での起債を検討している。ヨリオ財務次官は今年初め、同国政府が2024年下期にサムライ債を発行することを検討しているとインタビューで明らかにしていた。

22年8月以来の起債となるメキシコのサムライ債は、スロベニアによる発行計画に続くものだ。日銀が今年大規模な金融緩和策を打ち切って政策金利を2度引き上げ、エコノミストらがさらなる利上げの可能性もあるとみる中でも、円での借り入れコストが海外発行体を引きつけるのに十分なほど低いままであることを示唆する。

メキシコの起債は24年のサムライ債発行実績を押し上げる可能性がある。ブルームバーグがまとめたデータによると、年初来の発行額は前年同期比で22.5%減少している。投資家にとっては、新興国のサムライ債は国内発行体の債券よりも高い利回りを得る機会となる。

 

主幹事の1社である大和証券によると、メキシコは日本市場へのアクセスを続けたい考えだ。日銀の利上げや米経済の減速懸念で高まった金融市場のボラティリティーが足元で安定し、一時拡大したメキシコのドル建て債スプレッド(上乗せ金利)がタイト化している中でサムライ債の起債を決めたと話した。

ブルームバーグが集計したデータによると、メキシコはおよそ2年おきにサムライ債を発行している。2年前に発行した中で最長年限だった42年満期のサムライ債は、インフレ加速により世界各地の中央銀行が利上げに踏み切ったため、利回りが発行当時の約2.5%から約3.57%に上昇した。

外国為替証拠金取引(FX)投資家のポジションを示す東京金融取引所の「くりっく365」によれば、7月以降のリスク回避と円の急反発を受けて日本の個人投資家によるメキシコペソの対円での買い持ち比率は低下した。低金利の円を売って高金利のペソを買う円キャリートレードはこれまで、為替市場で最も人気のある取引の一つだった。

足元では世界的にインフレが緩やかになり、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が強まっている。それでも米国の10年物国債利回りは約3.87%と、日本国債の0.885%をなお大幅に上回る。

主幹事のみずほ証券によると、メキシコは調達した資金を国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関連したプロジェクトに使用する予定だという。

(第7段落に為替市場に関する情報を追加するなどして記事を更新しました)

--取材協力:酒井大輔.

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