(ブルームバーグ):2日の日本市場では株式相場が大幅続落し、日経平均株価はブラックマンデー以来、約37年ぶりの下げ幅となった。相次ぐ経済指標の悪化で米国景気の先行き懸念が広がり、投資家の間でリスク資産の保有を減らす動きが強まった。業種別33指数は全て安く、東証株価指数(TOPIX)は直近高値からの下落率が10%を超え、テクニカル分析上は調整局面入りとなった。

日本経済新聞のウェブサイトによると、日経平均の下げ幅(2216円)は1987年10月20日(3836円)以来の大きさだ。債券相場は大幅上昇し、1%の大台を割り込んだ新発10年国債利回りは6月20日以来の水準にまで低下した。円相場はリスク回避の動きから対ドルで一時148円台後半に上昇した。
三菱UFJアセットマネジメントの石金淳チーフファンドマネジャーは日本株について「ここまで下がるとは想定していなかった。ほとんどディザスター(災害)だ」と指摘。米景気が大崩れするとの懸念が出る一方、日本銀行が本格的に利上げを始めており、これらが重なり「先月までの楽観ムードが暗転している」と言う。
1日の米市場で発表された先週の新規失業保険申請件数がほぼ1年ぶりの水準に増加し、労働市場の減速を示唆。米供給管理協会(ISM)の7月の製造業景況指数は8カ月ぶりの大幅な活動縮小となり、雇用指数は4年ぶりの低水準となった。景気の先行き不安で同日の米長期金利は半年ぶりに4%を割り込み、米国株は半導体などテクノロジーセクター中心に大きく下げた。
投資家の不安心理の高まりは恐怖指数と呼ばれるシカゴ・ボラティリティー指数(VIX)の動きにも表れており、一時19台と4月以来の高水準に達している。
株式
東京株式相場は全面安。TOPIXの下落率は16年6月以来、8年ぶりの大きさとなった。米国で雇用環境の悪化を示す指標が相次ぎ、景気の先行き懸念が強まった。電機や機械など輸出セクター、銀行や保険、証券など金融セクター中心に東証33業種は全て安い。
銀行株は10%を超えて下落し08年10月以来の下落率。相場の急落を受けて、日本株への投資家心理を映す日経平均ボラティリティー指数は30付近まで急上昇し、2年ぶりの高水準となった。先物市場では、東証グロース250先物でサーキットブレーカーが発動され、取引が一時中断された。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、米連邦公開市場委員会(FOMC)と日銀会合をきっかけに「日米ともに巻き戻しの動きが見られる」と説明。焦点が景気になった時に米ISM統計の悪化などがあり、日本株では銀行株中心に海外投資家や投機筋の巻き戻しが起きているとの認識を示した。

債券
債券相場は大幅上昇。長期金利は0.9%台に低下し、1カ月半ぶりの低水準を付けた。米国で景気懸念から長期金利が2月以来の4%割れとなった流れを引き継いだほか、日本株の急落を受けて安全資産としての国債に投資資金が流れた。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、世界的にリスク回避のような展開になっていると指摘。「米景気が本格的に悪化した場合、日銀の追加利上げもできなくなるので、2年債にも買い戻しが入った」とし、「このリスクオフがどのくらい深刻になるのか見極める状況だ」と言う。
日銀は午前に定例の国債買い入れオペを実施した。対象は残存期間1年以下、1年超3年以下、3年超5年以下、5年超10年以下で、買い入れ額はそれぞれ1500億円、3500億円、3750億円、4000億円。日銀は7月31日に国債買い入れ減額計画を発表し、8月から各年限の1回当たり買い入れ金額を事前に明示していた。
大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジストは、残存期間1年超3年以下や3年超5年以下のオペ結果が強かったと分析。一方、長期・超長期債利回りが日銀の利上げ前の水準を下回っており、「来週の10年債と30年債の入札に投資家の需要が集まるかが試金石」と述べた。
日銀:国債買い切りオペ一覧 (表)
新発国債利回り(午後3時時点)

外国為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=149円台前半に上昇。金融機関が外為取引の基準レートとする公示仲値の設定に伴うドル買い・円売り需要や週末を前にしたドル買い戻しで下げる場面が見られたものの、日本株が下げ幅を広げる中でリスク回避の円買いが強まった。
ドイツ証券外国為替営業部の小川和宏ディレクターは「日本株の下落が円買い材料になっている」と指摘。日米の金融政策の方向性の違いに加え、米景気が市場の期待している通りに減速している中で株式や債券、為替の各市場で長期的なポジションの巻き戻しが起きているとの認識を示した。
りそなホールディングス市場企画部の井口慶一シニアストラテジストは148円台半ばに位置する2023年1月からのトレンドラインに注目。「トレンドラインを割れると、2年間にわたるドル高・円安トレンドが終了となり、145円までの円高が視野に入る」と語った。

--取材協力:田村康剛.
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