減税

  政府の歳出が税収を上回れば、実質的にマネーを創出し、経済に投入することになり、物価に上昇圧力を加える。近年の財政赤字の拡大はインフレの要因とされている。

  トランプ氏は減税を公約に掲げており、それは他の条件が全て同じの場合、財政赤字を増やす。共和党は歳出を抑制すると約束しているが、過去に同党がホワイトハウスと議会の両方を制していた時期には、そうした大幅な歳出制限は実施されなかった。

  トランプ氏の公約には、25年末に失効する17年制定の減税の延長や、その他多くの税金の削減または廃止を盛り込んでいる。ブルームバーグ・ビジネスウィークとのインタビューでトランプ氏は法人税率を現行の21%から最低15%に引き下げたい考えを示した。

  共和党はまた、サービスに対する心づけとして支払われるチップへの課税を廃止することも目指している。超党派の非政府組織(NGO)「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」によれば、財政赤字を10年間で最大2500億ドル(約39兆円)増やす恐れがある。

  ダブルライン・キャピタルのジェフリー・シャーマン副最高投資責任者(CIO)は、「減税は採算がとれない」と述べ、市場にとって最悪の結末は、ホワイトハウスと議会の両方を共和党が制することだと指摘した。

  

関税引き上げ

  販売業者や輸入業者、小売業者が追加コストを吸収するために利益率を下げない限り、関税引き上げはすべてのエンドユーザーにとって値上げにつながる。一度限りの関税引き上げは、インフレへの影響は1回限りとなることを示唆するだろうが、共和党が相互通商措置を約束すれば、継続的な関税引き上げの可能性が出てくる。

ブルームバーグ・ビジネスウィークとのインタビューでトランプ氏は、関税を政策措置として全面的に支持しながらも、具体的な関税率については明言を避けた。

  共和党の綱領は「ベースライン」関税を提唱。トランプ陣営は以前、全世界からの輸入に一律10%の関税を課し、中国からの全輸入品には60%の課税を行う案を打ち出していたが、トランプ氏はインタビューで、こうした具体的数字への支持は控えた。ピーターソン国際経済研究所(PIIE)の報告書によれば、中国からの輸入品にこうした課税を行う場合、平均的な中所得世帯で年間1700ドルの負担になる。

  ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は「スタグフレーション型の政策だ。だからエコノミストは関税を嫌う。 インフレと成長に同時に悪影響を及ぼす」と述べた。

移民抑制

  近年の歴史的な移民流入は米国の労働力人口の顕著な拡大に寄与しており、エコノミストは賃金上昇圧力を弱めていると指摘する。そうした中で共和党は、不法移民の抑制だけでなく、「米国史上最大の強制送還作戦」の実施を目指している。

  そうなればインフレを誘発する恐れがあるが、供給不足がコストを押し上げている住宅などの分野で物価圧力を緩和する可能性もある。 ザンディ氏はトランプ氏が移民を厳しく制限すれば、短期的には混乱を招くだろうと予想。コストや物価を押し上げ、農業や建設業、製造業、運輸業など労働市場がタイトなセクターで人手不足を引き起こす可能性もあると述べた。

原題:Trump’s Anti-Inflation Plan Risks Spurring Even More Price Hikes(抜粋)

--取材協力:Liz Capo McCormick、Ye Xie.

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