師匠との出会い
五橋文庫館長・大石紗蓼さん
「1番最初のこの3つ並んでるのは『天』なんですよ、天井の天」
ザックさんにてん刻を教えたのは、独立やてん刻文化を広める活動に取り組む五橋文庫館長の大石紗蓼さんでした。

大石さん
「やってみたら案外これはついてくるって感じだったので。1番最初に彫ったのがザックの『ザ』。小さな石に1字彫って次にフルネームを彫ろうかっていうことで」
「座る」の「坐(ざ)」、「空」と書いて「くう」、船をこぐ「櫓(ろ)」に、訓読みで「さざなみ」の「漣(れん)」、善悪の「善(ぜん)」。これらの漢字を組み合わせててん刻で「坐空櫓漣善」(ザックローレンゼン)を作りました。

ザックさん
「てん刻で最も難しかったのは漢字を正しく理解して組み合わせることでした。自分独自のデザインで作品を作ろうとすると何冊も辞書を調べなければなりません」
てん刻の魅力「明鏡止水」

漢字は未知の世界だったザックさん。何通りもある読み方、漢字の形や意味が作品にふさわしいかなど何冊もの辞書で調べ、てん書体の辞書に行き着くまでは容易ではありません。大石さんから渡された四字熟語のリストには、それぞれの熟語について自分で調べた意味が英語で書かれています。くもりがなく澄み切った心を意味する「明鏡止水」。てん刻の魅力を教えてくれたことばです。
ザックさん
「最初の大きな作品に『明鏡止水』を選んだのは、てん刻をしていると心がとても澄んで静かになったような気持ちになったからです。それがてん刻にひかれた理由でもあります」
人生観を変えた日本での経験

ザックさんは岩国駅前の英会話教室で講師として働いています。高校で日本語の授業を選択し、卒業後に英語サマーキャンプで来日。日本人の学生に英語を教えたことで、人生観が変わりました。

出会った人たちに温かく歓迎されたことや海や山の美しい自然、おいしい食べ物に魅了され、仕事で誘われたのをきっかけに再び日本を訪れました。英会話がうまくなるには「完璧であろうと思わないこと」とアドバイスします。
ザックさん
「会話をするというのは2人でひとつのアートを作り上げるようなものです。失敗をおそれずにあらゆる経験を学びと成長の機会と捉えて楽しんでみてください。それがことばを学ぶ最良の方法だと思います」