2013年7月28日、山口市や萩市など山口県北部を豪雨が襲いました。2人が死亡、1人が行方不明となり、1700棟以上の住宅が被害を受けました。

萩市の山あいにある、小川地区。ここも町が濁流に襲われました。澄川酒造場は壊滅的な被害を受けましたが、この10年で、醸す酒は全国でも指折りの人気になりました。復活を果たしたかに見える、酒蔵の社長はこの10年をどう振り返るのでしょうか。そこには、これからも向き合わなければならない現実がありました。

澄川酒造場 澄川宜史社長兼杜氏
「10年前は、酒造りが途絶えかけていたというか、皆様方に酒造りの土俵に戻してもらえたので感謝の気持ちを強く持つようになったことと、10年前までは、当たり前だった酒造りがすごく楽しいですね、今ね」

萩市中小川の澄川酒造場。東洋美人の銘柄で知られる酒蔵は今年、創業102年を迎えました。その長い歴史の中でも、この10年、あまりにたくさんのことがありました。2013年7月28日、この小川地区も豪雨で町を流れる川が氾濫。町につながる道路は土砂崩れによって寸断され、一時、孤立するほどでした。

社長で杜氏の澄川宜史さんは、その日をはっきりと覚えています。

澄川さん
「災害当時、シンガポールにいて、妻から電話がかかってきて『避難勧告が出た』と。『子どもたち連れて避難しておけば』と。電話で『逃げ遅れた』と。そこで電話がつながらなくなった」

澄川さんはすぐに出張先から帰国。幸い家族は無事でしたが、蔵の一帯は濁流の跡で茶色く染まり、酒造りの設備も壊滅状態になりました。10年がたって、ここにも、被害の跡はほとんどありません。唯一残っているのは…

澄川さん
「目に見えるといったら、たぶんこの線、水が来た線。これは消えないですね…うん」

被災直後から、全国の酒蔵が復旧作業にやってきました。仲間の支援を受けて、翌年には酒造りを再開することができました。1年5か月後には3階建ての新しい蔵が完成。

酒造りもずいぶん変わりました。