庄司選手は、これまで続けてきた「会社員とプロ選手」の二刀流に、今、幕が下りようとしている。3年間勤めた印刷会社「トライ・プリント」も辞める。それは、新たなゴール“民宿経営”に向けて高く跳ぶための助走だ。24日(日)午後1時から氷見市ふれあいスポーツセンターで行われるホーム最終戦への思いを聞く。
(最終話・総集編/取材:島津有希)

外車ディーラーからバイオ研究まで 職場で発揮されるプロ選手のプロ意識

庄司選手は、現在、トライ・プリントが運営する氷見市のグッズショップ「ヒミツノアソビバ」の店員や営業、デザイン制作から印刷まで幅広い業務を任されている。

店内には、富山や氷見らしいデザインが印刷されたTシャツやマグカップなどオリジナルアイテムのほか、藤子不二雄(A)さんの作品「忍者ハットリくん」や「笑ゥせぇるすまん」など人気漫画のキャラクターグッズも展開されている。

「見ているお客様が『これ可愛い』とか『これいい』って言ってくれたら、嬉しいですね」

そもそも庄司選手の職歴は幅広い。ドリームス移籍前のゴールデンウルヴス福岡に所属していた時代には、チームの方針で斡旋された職場でお菓子屋、倉庫業、バイオ研究など多彩な職歴を持っていた。

「大学卒業後に大阪で外車のディーラーも10か月ほどやっていました。その後、『もっとハンドボールがしたい』という思いが強くなり退職しましたが。得意とか不得意とかなく、与えられた仕事は責任持って覚えてできるようになるという感じです」

「最後の勇姿を社員全員で」 職場の仲間からも愛される一人のアスリートの引き際

ハンドボールの選手としての顔が、印刷会社での仕事にも好影響をもたらしている。

「今も違うチームの選手とかファンの方から『Tシャツ作ってくれ』とか『トートバッグ、この選手の名前入りで作ってくれ』みたいな。そういう繋がりが、ハンドボールで出た繋がりがこっちの仕事にも繋がるのは、自分しかできないというところも含めて嬉しいです」

庄司選手の仕事ぶりに斎藤社長はこう語る。

「仕事をする中で、彼も失敗したことやミスしたこともあります。そういった時でも彼は過度に深く落ち込むことはなく、常に前を向き『どうやったら上手くできるかな』と前向きにミスをリカバーする方法を考えて業務に取り組んでいます」

最後にどんなプレーを見たいか。斎藤社長は目を輝かせて答えた。

「彼のあの凄まじいジャンプシュート、そしてサイドからのシュートをまた見たい。最終戦の日は社員みんなで応援に駆けつけ、彼の最後のアスリートとしての姿を見届けたいと思っています」

「勝ったのは10回ほど」 過酷な3年間で掴んだ、勝利よりも価値ある財産

現役最終戦は、5月24日午後1時から、ホーム・氷見市ふれあいスポーツセンターで行われアースフレンズBM東京・神奈川と対戦する。試合終了後には、庄司選手のほか、ともに1年目から切磋琢磨した背番号19の池間飛勇選手と髙木アレキサンダー選手も現役最後のプレーとなり、試合後にはセレモニーが行われる。

庄司選手は、富山ドリームスでの3年間をこう振り返る。

「この3年間、勝ったのはわずか10回ほどでした。60試合近く戦い、毎日夜遅くまで練習し、仕事の合間や休みを返上して打ち込んでも、結果は負けの方が多い。そんな過酷な3年間でした。ですが、最後まで諦めずに強敵に食らいつき続けた経験は、ここでしか得られなかったものです。たとえ負けても最後までやり抜く姿勢は、競技を離れ社会人として歩む上でも必ず通用する。そうハンドボールを通じて確信していますし、その思いを子供たちに伝えたい」

「もう本当に『完全燃焼』と言えるくらい、全ての力を出し切って笑顔で終わりたいです」

最後に見てほしいプレーを問うと、力強く答えた。

「速い速攻、高いジャンプ力、そして逆サイドからのシュート。今は正サイドも務めていますが、どちらも足を使い、ジャンプ力を活かしたプレーです。そこをぜひ楽しみにしてほしいですね」

20年愛したハンドボールを胸に。「第2の人生」まもなくスローオフ

「やりたいと思ったことは全部やります。失敗しても恥ずかしくない。それが自分の人生を自分で作る素晴らしさだと、子どもたちに証明したいんです」

彼が第2の人生の舞台に選んだのは、やはりハンドボールの聖地・氷見だった。

「氷見は本当に経験者が多くて、競技をやっていると言えば誰もが応援してくれる場所。その分、ファンの方の目も肥えていて、時には厳しい叱咤激励をいただくこともありますが、それもまた氷見ならではの温かさだと感じています」

街全体が競技を支え、育んでいく。そんな未来を庄司選手は見つめている。

「民宿をスタートして、ここに泊まった子どもたちが、僕のように氷見に帰ってくる。そんな循環が生まれれば、最高にハッピーですね」

中学時代、「春中ハンド」でこの地を訪れ、日本一の歓喜を味わった一人の少年。20年もの間、ハンドボールを愛し抜いた男は、氷見の地に『民宿』という名の新たなコートを築き、まもなく、人生の第2章を告げるスローオフの笛が鳴る。

一途にボールを追い続けてきたその情熱は、今、子どもたちの未来というゴールへ向かって、再び高く跳び上がる。

-完-

【富山ドリームス:庄司清志選手のプロフィール】
生年月日:1995.06.10
身長/体重:172/65
利き腕:右
血液型:O
出身地:大阪府
球歴:大浜キッズ→大体大附属中→関西大北陽高→大阪経済大→八光自動車→ゴールデンウルヴス福岡