富山県砺波市の小さなカフェに5月のある日、一枚の絵が展示されました。新聞紙を広げたよりもさらに一回り大きなポスターサイズに、ある人の100年分の記憶がぎっしりと描き込まれた作品「人生全景絵」です。今年100歳を迎えた元・自衛官、伊藤博芳さんの軌跡を可視化した絵です。この絵は、ある問いを私たちに投げかけているようです。「あなたは、大切な人の人生をどれだけ知っていますか?」

「3時間しゃべった」6年越しの1枚が完成

作品を手がけたのは、富山在住のトークグラフィッカー®、山口翔太さん。会議やワークショップで話し合いの内容をその場でイラスト化するトークグラフィック®事業を展開しています。

みやの森カフェ(富山県砺波市)5月13日取材

トークグラフィッカー® 山口翔太さん
「構想はあったのですが、いざ実行に移そうと思い立ったのは6年前です。そのときは本当にみっちり3時間、伊藤さんに話していただいて…。その場で紙に絵を描いていきました。こちらの作品は、100歳の節目に合わせて、改めてデジタルで仕上げ直したものなのです」

トークグラフィッカー® 山口翔太さん

もともとは2020年1月、伊藤博芳さんの娘で、カフェを運営する加藤愛理子さんからの依頼で制作がスタートしました。当時93歳だった伊藤さんが語る、自衛隊時代のキャリアは驚くほど詳細で「ここで2年何々をしていた」という話が続いたといいます。追加で調べた情報は一切なく、すべてはその場で語られた言葉から描かれた絵でした。

2026年4月9日には追加のインタビューを行い、100歳になった現在の価値観を絵に付け加えました。

幼少期に住んだ横浜時代や、海軍兵学校で学んだ頃の記憶、自衛隊での全国転勤、定年後の木工教室、そして現在の砺波での芸術活動まで——1枚の絵の中に100年の人生の歩みが凝縮されています。