銃声と「撃たれました」 直後の壮絶な現場

記者がこの音声を聞いたところ、事件直後、奥田交番にいた交番相談員と県警通信指令課のこのような音声が記録されていました。

<交番相談員>
奥田交番で刃物を持った者が暴れている
<警察官>
刃物を持ったものが暴れていると、もしもし、奥田交番ですか?

<交番相談員>
奥田交番です
<警察官>
警察官誰もいないの?もしもし?
<相談員>
すぐ来てください

<相談員>
警察官が、警察官が、鉄砲で撃たれました。

記者が聞いた限りでは、相談員は息を切らしながら現場の状況を必死に伝えているように感じました。最初の通報には、銃声とみられる発砲音が記録されていたほか「警察官が鉄砲で撃たれました」といった相談員の声が記録されていました。また「やめろ」と争うような声や、うめくような声も聞こえました。

緊迫した現場からの訴えに対し、通信指令課員は「犯人を見ました?」「もしもし、警察官いないの」「電話に出れます?」などと繰り返し呼びかけていました。

公開された音声には110番通報のほか、通信指令課と現場に向かう警察官の無線のやり取りも記録されています。

通信指令課は、警察官に「さすまた」の所持や防護服の着用を指示しましたが、周辺住民に注意喚起を促す指令はありませんでした。

また、奥田小学校の女性職員からの緊迫した通報内容も記録されていました。

<女性職員>
奥田小学校に拳銃を持った人が来てます

<警察>
もう、向かわせていますので。男はどこにいますか?

<女性職員>
正面玄関に今

<警察>
取り押さえに行っているのは職員さん何人で?
<女性職員>
いや何人と言うか、もう居る者全員で。

小学校の職員が切迫感のある様子で中村さんが撃たれた可能性を伝えたり、警察官が混乱する現場で対応するやり取りもありました。

「危険を認識できず」とした司法判断

中村さんの妻は、この音声データを法廷で流し、多くの人に聞いてもらいたいと話していました。

中村さんの妻
「最初に危険を察知してしまえば、すぐ指令が出せるはずなんですよ。住民の安全確保に関しては、一切指令が出てないというのも、本当にその音声録音を聴けば分かることなんですけど」
「それを証拠として公開法廷の場で流していただけなかったっていうのは残念でならない」

9月29日の判決で富山地裁は、警察が拳銃を奪われたと認識できたのは最初の警察官が交番に到着した後であり、中村さんが殺害される直前まで警察官が通行人などに、拳銃を発射する具体的な危険性があるとは認識できないとしました。

また通信指令課からの無線を聞いた現場の警察官の対応については、仮に避難を呼びかけていたとしても中村さんが聞けたかどうかは明らかではないとしたうえで、単に刃物を持った男が交番周辺にいるという内容で周辺住民や通行人に避難するよう警告した場合、パニックを誘発する危険性があるほか事態を一層悪化させる可能性もあるとしました。

中村さんの妻
「きょうの判決は、本当に残念でならないの一言ですかね」

原告側は今後、控訴する方針です。

音声データは富山地裁で手続きをすれば、聞くことができます。