いきなり逆走車が目の前に…衝撃で目を覚ますと
5月4日の夜、心誠くんは家族とともに、兄が暮らす京都へ向けて車に乗って出発しました。
母親は心誠くんに「京都に着くのは朝早いからそれまで寝ていていいよ。着いたら起こしてあげるからね」と言いました。祖父母の家で、遊んで疲れていたのでしょう。心誠くんは、シートベルトをして、車のドアにもたれて、すぐに寝てしまいました。
父親と母親が休憩をしながら交代で運転をしていました。助手席の母親が、後部座席でぐっすり寝ている心誠くんの首が痛くならないように向きを変えます。
そして、日付が変わった午前0時50分。
家族の車が、滋賀県大津市北比良の国道161号志賀バイパスを走っていたとき…いきなり対向車線を走る乗用車が中央線を越えて向かってくるのが見えました。逆走した車が目の前に迫り、父親がブレーキを踏んで、左にハンドルを切りましたがよけきれず、車の右後部に衝突しました。
助手席で寝ていた母親は、衝突の大きな音と衝撃で目を覚まし、後ろを振り返ると、車の後部座席の窓ガラスが粉々に割れていました。
すぐに母親は父親と車を降りて、後部座席の心誠くんを確認します。このときの様子を母親が語りました。
心誠くんの母親:
「心誠がもたれて眠っていたサイドドアがロックしてあったにもかかわらず、事故の衝撃でどこかにふき飛んでなくなっていました。シートベルトをして、眠っていた心誠。もたれていた右側の頭に大きな大きなけがをしているのが見えました。心誠!心誠!何度呼びかけても返事はありませんでした。こんなに大きなけがをしているのに、痛そうな顔もせず、痛いと言って目を覚ますこともなく、さっき首を直してやったときと同じ顔で眠ったままでした。救急車が到着するまで、ただ大きな声で心誠の名前を呼び続けるしかありませんでした」
心誠くんはすぐに救急病院へ搬送されましたが、脳挫傷でまもなく死亡が確認されました。
心誠くんの母親:
「たった9年前、小さな小さな命の誕生を家族みんなで見守ったのに、どうしてその命が…。みんなでその命を大切に大切に育ててきたのに、家族5人で、笑って、泣いて、喧嘩して、励まして、教えて、教わって、慈しんで愛して、普通に真面目に生きてきたのに、どうしてこんなことになったのか。これは現実なのか、目の前にいる心誠がいなくなってしまったなんて。嘘だ…。嘘だ…」