10月9日、東北新幹線で薬品が漏れ、乗客ら11人がやけどなどをした事故についてです。薬品からは硫酸と硝酸が検出されましたが、専門家は「強い酸性の液体をペットボトルに入れるのはあり得ない」と指摘しています。

この事故は今月9日、仙台駅付近を走行中の東北新幹線の車内で薬品が通路に漏れ、あわせて11人がけがをしたり体調不良を訴えたりしたものです。警察の鑑定の結果、薬品からは硫酸と硝酸が検出されました。また、薬品を車内に持ち運んでいた地質調査会社の社長の男性は「薬品をペットボトルに入れて運んでいた」と話していることがわかっています。

東北大学大学院の上田実教授は「状況から判断すると硫酸は濃硫酸」と推測したうえで、「強い酸をペットボトルに入れるのはありえない」と話します。

東北大学大学院有機化学第一研究室 上田実教授:
「PETは「ポリエチレンテレフタラート」と言うが、最も酸とかアルカリといった薬品、有機溶媒に弱いプラスチック。酸を持ち運ぶ時にPETに入れるのはまずありえない」

東北大学大学院有機化学第一研究室 上田実教授

こちらはプラスチック製品の薬品への耐性を示した表です。濃硫酸の場合、PET=ポリエチレンテレフタラートは「大きく影響があるため使用に適さない」と評価されています。

東北大学大学院有機化学第一研究室 上田実教授:
「PETはエステルという系統の化合物。エステルは酸で加水分解という反応が起こって、分解してしまう」

さらに、新幹線の車内には煙が発生していたという情報もあり、これについて上田教授は「硝酸」の中の水分にも注目します。

東北大学大学院有機化学第一研究室 上田実教授:
「硝酸は濃硝酸であっても「水」を含んでいる。濃硫酸は水と混合すると熱を発する。硫酸のペットボトルが溶けて、漏れてきた濃硫酸と(硝酸が)混合することで熱が出たことは考えられる。漏れてきた濃硫酸が紙とか布のバッグなどと反応すると「脱水作用」が起きるので、それで煙や熱が出たと一つの仮説として考えられる」

警察は男性から引き続き話を聞き事件と事故の両面で調べています。