村井知事の言動を専門家はどう考える

進退を持ち出して理解を求めようとした今回の言動。果たして専門家はどう捉えたのでしょうか。地方政治に詳しい東北大学大学院の河村和徳准教授に聞きました。

東北大学大学院 河村和徳准教授:
「政治家ですので、何を発言するかは知事の自由だと思います。ただ、全国知事会長に就任したばかりのタイミングだったので進退に言及するのはどうなのか、ヒートアップしてしまったのかもしれません」

東北大学大学院 河村和徳准教授

河村准教授は、村井知事の言動よりも宮城県と仙台市の関係性に着目。両者の関係性を「アクション県政、リアクション市政」と表現して次のように指摘します。

東北大学大学院 河村和徳准教授:
「財政状況が厳しい中、病院や地域医療を存続させていくのは難しい課題。知事としては、県の財政に重い負担が生じないよう民間との再編統合を進めたいのではないか。一方で仙台市の郡和子市長は、県のやり方に批判をするものの、対案を出したり財政支援したりする様子がない。まさにアクション県政、リアクション市政です」

一方、TBSの元政治部長で流通経済大学の龍崎孝副学長は、進退を持ち出して「1か0か」という2者択一を迫る言動は好ましくないと指摘します。

TBS元政治部長 流通経済大学 龍崎孝副学長:
「(進退への言及は)知事が実現したい政策課題への決意の表れですので否定はしません。しかし、本来政治は『合意』が基本であり、意見の食い違いを議論で縮めながら『妥協』、『合意点』をみることが民主主義のルールです
強いリーダーとは、決断をすることだけではなく、あらゆる批判に耐えられ、他者を受け入れること、それが強さです。その点では『だったら辞める、それでもいいか』というのは有権者、県民への恫喝といってもいいかもしれません」

TBS元政治部長 流通経済大学 龍崎孝副学長

4病院再編が構想通り進まなければ知事を辞めると言う言葉。重い言葉であることは言うまでもありません。

一方、この発言を聞いたとき、一種のデジャブのような感覚に陥りました。「辞職する覚悟」を口にするのは、これが初めてではないからです。今からちょうど10年前の2013年、村井知事は、「ある事業」を巡っても進退に言及していました。それは、東日本大震災の発生から2年が経ち全国的な論争を起こしていた「防潮堤」についてです。

「知事職を失っても構わないと思ってやっている」防潮堤整備で村井知事10年前にも進退発言していました。仙台医療圏4病院再編構想問題との共通点を探ります。(後編)