証拠開示 高いハードル

ー再審開始まで9年もの時間がかかった背景には、法制度の問題があります。村山さんが改正すべきと考える再審法の問題点を教えてください。
3つあります。1つ目は、証拠開示の問題です。過去の、再審で無罪になった事件をみると、捜査機関が持っていたにも関わらず、有罪を確定した裁判では出てきていなかった証拠が新たに開示されることで、裁判官に、無罪方向の証拠があったのだと再評価されて無罪になるという事例が非常に多いのです。また、新たに開示された証拠物を新しい技術で鑑定した結果、無罪であることがはっきりした事件もあります。

つまり、証拠開示は非常に重要な意味を持っていますが、再審請求手続の中で「捜査機関は証拠を開示しなければならない」というルール(条文)はありません。

ー裁判官にとって、検察官に新たな証拠を開示するよう勧告するのは、難しいことですか。
裁判官が検察官に証拠を開示するよう説得するハードルは高いです。開示の必要性がわかりやすい証拠であれば、検察官も大きく抵抗はしません。しかしそうでない証拠の場合は相当抵抗されるのが常です。

検察官は「なぜ開示が必要なのか」と問うてくるので、裁判官ははっきりとした見解を持って、検察官に必要性を説明しなければいけません。粘り強く勧告を続けながら、あの手この手で説得を試みることになりますが、そこは裁判所の努力に委ねられているというわけです。

袴田事件の場合も、約600点もの新たな証拠が、複数回にわたって開示されました。検察官が一度に全部出さないからです。その都度「弁護団がこういう主張をしている。それについてはこういう証拠があるはずだし、必要だ」と説く。まず、あるのかないのかという問題と、ある場合に、出すのか出さないのかという問題。こういった問題についてある程度議論をしないと、なかなか出てこない。それが現実です。ルールがあれば、当然そうしたやり取りは不要になります。だからルール化すべきです。